

グリホサート禁止でEU諸国の先頭かに見えたフランスだったが、マクロン大統領の「3年以内の禁止」が議会で否決された。その一方、EUの登録延長に賛成したチェコは来年からの禁止の方針を明らかにした。
France 24によると、チェコ農業相は9月17日、除草剤グリホサートについて、来年から収穫前の乾燥目的の使用も含め全面的に禁止すると述べたという。報道では「来年」とだけで、禁止の詳細ははっきりしていない。チェコは、昨年11月のグリホサートの登録延長に関するEUの加盟国投票では賛成票を投じていた。
・France24, 17 September 2018一方、マクロン大統領が昨年11月に3年以内のグリホサート禁止を明言していたフランスは、その禁止が難しくなっている。農業情報研究所によれば、大統領の方針を受けて農業相や環境相がグリホサート廃止への道を探ってきたものの、農業者の反対が強く、農業・食料法案に3年以内の禁止を盛り込まれていない。一部議員が3年以内の禁止を盛り込んだ修正案を国民議会(下院)に提出したが、9月15日に否決されたという。
・農業情報研究所, 2018-9-16 ・Reuters, 2017-11-28欧州のグリホサートの健康影響を懸念する消費者の声が大きくなっている。昨年には、グリホサートの禁止を求めた市民発議の署名は140万人に達したという。こうした市民の声を背景にして、ドイツでは今年春の大連立交渉において、SPD(ドイツ社会民主党)の要求を呑む形で早期のグリホサート禁止で合意してる。ドイツにおけるグリホサートの販売量が減少しているという。6年前の5千トンから、2016年には3800トンに減少したという。しかし連立合意の一方で、ブドウ栽培などでグリホサートに代わる除草剤がなく、完全な禁止は難しいと見られているという。
・Euractiv, 2018-9-6こうした国レベルの動きとは別に、先月の米国カリフォルニア州の3億ドル賠償判決もあり、欧米の市町村でのグリホサート禁止や小売業界での取扱いの中止の動きがいろいろと出ているという。さらには、モンサントを買収したバイエルを相手取ったラウンドアップによる損害買収訴訟が約8千件以上に達したという。
動きの見えない日本 まず非農業用の禁止を
欧米の動きとは異なり、損害賠償訴訟はもとより、自治体レベルでの禁止や小売業界での販売中止の動きは日本では見えない。自治体が率先してグリホサートを使っているという状況もある。農水省は今年、グリホサート製剤合計9剤を新規登録している。国立環境研究所のまとめでは、日本のグリホサート出荷量は2016年、約5400トンだったという。出荷量は減るどころか増えているのが現状だ。
斎藤農相(当時)は今年6月7日の参院農水委員会で、紙智子議員(共産)の質問にEUの禁止するネオニコ系3剤とグリホサートを優先的に再評価と答弁しているが、農薬取締法で規制されない農業用途以外の使用には触れられていない。一方、欧米を中心にして非農業用のグリホサート禁止も進んでいる。昨年11月にグリホサートの農薬登録延長を決めたEUは、非農業用の使用を認めていない。日本では、グリホサート系の農薬(ラウンドアップ)がホームセンターなどで野放しに販売されている。まず再評価を待たず非農業用の使用を禁止すべきではないか。
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