

スイスのヌーシャテル大学などの研究チームは3月30日、スイスの有機農地の9割がネオニコチノイド系農薬で汚染され、有益な昆虫に影響を与えているとの研究結果を専門誌に発表した。研究チームはこの結果について、ネオニコチノイド系農薬の拡散と過剰使用を減少させるべきだとしている。
調査はスイス全土の62か所の農地や環境保全エリア(Ecological Focus Area: EFA)から採取した700余りの土壌と作物などのサンプルについて、欧州で登録されている5種類のネオニコチノイド系農薬を検査したもの。有機農地の93%から、環境保全エリアの80%以上からネオニコチノイドを検出したとしている。また、同時に検査した有機種子もネオニコチノイド系農薬で汚染され、16サンプルのうち14サンプルからネオニコチノイドが陽性だったとしている。
研究チームはまた、この農地や環境保全エリアにおけるネオニコチノイド汚染が昆虫などに与える影響を試算し、現実的なシナリオとして有益な無脊椎動物種の最大6.8%が亜致死濃度に曝されるとしている。しかし最悪のケースであっても、有害種は致死濃度に曝されることはないとしている。
研究チームは、ネオニコチノイド系農薬による拡散汚染が非標的の有益種のかなりの部分に害を及ぼす可能性があることを示唆しているとしている。ネオニコチノイド系農薬の作物への使用は、有機農業の実践を危険にさらす可能性がある一方で、保護エリアでの生物多様性を脅かす可能性があると警告し、有機農地や環境保全エリアでの有害な影響を防ぐためにネオニコチノイド系農薬の拡散と過剰使用を減少させるべきだとしている。
スイスの有機農業団体ビオ・スイス(Bio Suisse)は、この研究結果について「ぞっとする」と評し、より厳しい規制を要求するとしているという。
・Journal of Applied Ecology, 2019-3-30 ・Swiss Info, 2019-4-72013年、EUがイミダクロプリドなど3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外使用を一時禁止したことを受けて、スイスでも同様に使用が禁止された。この研究結果は、周辺の慣行農地から水や風などにより飛散していることを示しているといえる。
これまでに埼玉県環境科学国際センターによる調査で、埼玉県内の河川水からネオニコチノイド系農薬検出が報告されており、日本でも同様の汚染が十分に考えられる。
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