最終更新日:2019年7月13日
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2019.07.13 No.984
■米国環境保護庁 スルホキサフロルの登録拡大を発表
bee_orange.jpg / Flickr
ミツバチとミカンの花 / Abby flat-coat / Flickr

 米国環境保護庁(EPA)は7月12日、スルホキサフロルの適用作物の拡大登録を発表した。米国では、スルホキサフロルは2015年の登録無効確認訴訟の判決により、一旦登録が取り消されたが、翌2016年、登録範囲を限定して再登録された。今回、2013年の最初の登録時の適用要件を復活させ、新たにアルファルファ、トウモロコシ、キビやオーツ麦などの穀類、ソルガム、テフ、パイナップル、カカオ、植林に適用作物が拡大された。2016年の制限も一部解除された。国際農薬行動ネットワーク・北米(PAN NA)は同日、農薬会社に追従している環境保護庁の姿勢を非難する声明を発表した。

 今回の適用拡大では、48時間前に周辺の養蜂家への連絡を求めている。また、開花中のかんきつ類は1回限り、ナシやリンゴ、ナッツ類の開花3日前から開花中の使用は禁止としている。開花期規制のない日本と比べ、限定的とはいえ開花期規制が付いている点はいくらかは厳しいものになっている。

 ・EPA, 2019-7-12  ・EPA, 2019-7-12  ・EPA, 2019-7-12

 環境保護庁は発表で、「この決定は十分なデータにもとづいた」としている。一方で「花粉媒介者に対する保護を維持しながら、スルホキサフロルを生産者が使用できることを確実にするために、ミツバチのコロニーに対するスルホキサフロルの影響に関して当局に提供された追加の研究と、使用後のハチの曝露の可能性に関する12以上の研究をレビューした」とも述べている。新たに検討したデータは、スルホキサフロルを開発したダウ・アグロサイエンスが提出したデータだけであったということになる。これまでと同様に、これらのデータの詳細は明らかではない。

 ガーディアン紙(電子版)は、検討した研究のほとんどが農薬業界が支援したものだと指摘している。

 ・Guardian, 2019-7-12

 今回の環境保護庁の決定に対して国際行動ネットワーク・北米は12日、適用拡大を非難する声明を発表した。同ネットワークのシェーファー代表は、「スルホキサフロルの適用拡大するという環境保護庁の決定は、ミツバチや養蜂家、農家、そして我々の食料システムにとって悪いニュースです。米国で栽培されている多くの果物、野菜、ナッツを享受している人は誰でも、今日の決断について懸念するべきです」と懸念を表明した。また「科学界などからの強い反対にもかかわらず、政府機関は再び意思決定において業界資金による情報に依存しています。環境保護庁は、農薬会社に追従するのではなく科学に従うべきです。科学的証拠は明らかであり、代替手段もあります。事実、受粉者(ポリネーター)は危機に瀕しています。その用途を拡大するのではなく、スルホキサフロルのような蜂にとって有毒な農薬を市場から排除する時です」と述べている。

 ・Pesticide Action Network North America, 2019-7-12

 スルホキサフロルは、米国蜂蜜生産者協会(American Honey Producers Association)など養蜂関係4団体と個人が、登録は連邦法(Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act)に違反するとして、その無効確認を求めて、環境保護庁とダウ・アグロサイエンスを2013年に訴えて、2015年9月に連邦地裁で登録無効の判決が下された。この判決を受けて環境保護庁は、一旦、登録を取り消し、2016年に限定的に再登録した。

 環境保護庁は2019年6月、ワタとソルガムのアブラムシ防除に関してフロリダ州など12州に限定し、スルホキサフロルの使用を緊急解除していた。

 ・EPA, 2019-6-20

 農薬メーカーの提出したデータを元にして安全であるとした今回の環境保護庁の決定の一方で、欧州食品安全機関や欧州の大学などの研究グループにより、スルホキサフロルのミツバチへの影響を指摘する結果が明らかになっている。

 欧州食品安全機関(EFSA)は今年3月28日、スルホキサフロルについて追加情報によるリスク評価書を公表し、いくつかのシナリオを検討した結果、ミツバチとマルハナバチに対する高いリスクが特定されたとしている。

 ・EFSA, 2019-3-28

 スルホキサフロルは、ネオニコチノイド系と同じように野生のハチに有害との研究結果が発表されている。昨年8月、ロンドン大学の研究グループは、スルホキサフロルはマルハナバチの繁殖に有害と発表している。

 ・Royal Holloway University of London, 2018-8-14

 スルホキサフロルは、農薬分類が異なりネオニコチノイドではないとして、フランスのネオニコチノイド系農薬全面禁止の対象外となっている。しかし、オランダのルーヴェン・カトリック大学の研究グループは今年4月1日、スルホキサフロルの受容体は、ネオニコチノイドと実質的に同一であり、同じ作用機序であると専門誌に発表した。この結果について、化学的な組成で分けるのではなく、標的とする受容体における薬理学的活性に基づくべきであることを示唆するとしている。

 ・FASEB Journal, 2019-4-1

 米国環境保護庁は、スルホキサフロルがネオニコチノイド系や有機リン系などの農薬に耐性が出来つつある害虫の防除に「有効」だとしているが、いずれ耐性が現れ「有効」ではなくなることははっきりしているといえるだろう。農薬に依存するのではない方法に移行すべきである。

 ミツバチに代表される受粉媒介生物を減少させることは、ひいては多くの野菜や果物が受粉に依存せざるを得ない食料生産にとって、生産量の減少要因となりうる。生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)は2016年、ミツバチなどの受粉媒介生物による世界的な経済的価値は2350億ドルから5770億ドルとする報告書を発表している。英国レディング大学などの研究グループも同年、農業部門の14億人の雇用と全農作物の4分の3が、ハチなどの受粉媒介生物に依存しているとする研究結果を発表している。

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