このところ、生物多様性や昆虫の減少に警鐘を鳴らす報告書や研究結果が立て続けに発表されている。集約的な農業、農薬による汚染、都市化などの要因が指摘され、多様性が崩壊することにより、食料生産のみならず生活環境などの悪化を警告するものとなっている。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)は5月6日、総会で承認された地球規模の生物多様性に関する報告書を公表し、前例のない自然の危険な衰退が起きており、種の絶滅が加速し100万種が絶滅の危機に瀕していると警告した。
発表では、1900年以降、陸上の在来種は20%減少。両生類の40%、サンゴの33%、海洋哺乳類の3分の1以上が脅かされていて、16世紀以降、680種の脊椎動物が絶滅したという。昆虫は10%が危機に瀕しているとして、こうした損失は人間の活動の直接的な結果であり、世界のすべての地域で人間の幸福に対する直接的な脅威となっていると指摘している。現状の世界的な対応では不十分であり、自然を回復させる変革が必要だとしている。報告書は50カ国の145人の専門家などにより1万5千件の科学的な情報を評価した包括的な報告書としては最初のものだという。
・IPBES, 2019-5-6より厳しい「昆虫の絶滅」という見方もでている。豪州・シドニー大学などの研究グループは先ごろ、昆虫相が急激に減少し、この「減少」は過去5億年の間で6回目となる「大量絶滅」の一環だと指摘する論文を発表している。研究グループは昆虫種の40%が絶滅の危機に瀕しており、集約的な農業がその主要な原因であり、農薬汚染、浸入生物種、気候変動が副次的な原因だと指摘している。
この論文の根拠のひとつは、30年にわたり定点観測を続けてきたドイツの昆虫愛好家のグループによる急速に昆虫の個体数が減少しているというデータだという。エタノールで保存されたサンプルでは、1994年に比べ最近では2割程にまで減少しているという。
・Biological Conservation, 2019-4 ・AFP, 2019-2-12 ・AFP, 2019-7-13国連食糧農業機関(FAO)も今年2月、生物多様性崩壊の危険性を警告する報告書を発表している。報告書は、食料生産システム(食料の生産から流通・消費までの流れ)を支える生物多様性が失われつつあり、我々の食料のみならず健康や環境の将来を深刻な脅威に曝している証拠である警告している。食用に栽培される6千種の植物のうち200種が多くを占め、総生産量の66%をわずか9種に依存しているにすぎないと指摘し、家畜生産はわずか40種に依存し、7千種余りの家畜動物の26%が絶滅危機にあるとしている。また、魚資源の3分の1近くが乱獲されており、半分以上が持続可能な限界に達しているとしている。
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