最終更新日:2019年7月23日
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2019.07.23 No.989
■環境レベルのネオニコがトンボ類の減少に中心的な役割 オランダの研究
Itotonbo_male.jpg / Wikimedia
イトトンボ(オス) / Charles J Sharp / Wikimedia

 オランダ・ライデン大学の研究グループは7月2日、屋外実験によって環境中のネオニコチノイド系農薬のチアクロプリドがイトトンボ類を減少させるという研究結果を専門誌に発表した。ネオニコチノイド系農薬の影響は、受粉を媒介するミツバチなどばかりでなく、今回の研究のようにトンボや他の昆虫にも及んでいる。研究グループは、害虫駆除に使われ環境中に残留したネオニコチノイド系農薬が、自然が備えている害虫駆除システムに悪い影響を及ぼしている可能性があると指摘している。

 Journal of Applied Ecology(電子版)に発表された論文では、研究グループは、ネオニコチノイド系農薬がトンボ類減少全般において中心的な役割を果たすことを示しているとしている。また、エサを与えられる研究室内での実験に比べ、「自由に」エサをとる自然界での影響はより大きくなるとしている。

 研究グループは、トンボやスズメバチのような肉食昆虫が農業にとって有害な生物を捕食しているにもかかわらず、そうした有害生物を駆除するために使われる農薬が捕食生物を減少させていると指摘。有害生物駆除に使われた環境レベルのネオニコチノイド系農薬が、自然が備えている害虫駆除システムに悪い影響を及ぼしている可能性を示していると指摘している。

 この研究に関するライデン大学の発表では、イトトンボの数はチアクロプリドの濃度の増加とともに強く減少することを発見したとしている。発生数の急減は、繁殖の減少につながりイトトンボの消滅につながると指摘している。バタフライ財団のデータは、この考察を補強し、2008年以降、このイトトンボ類の減少を示しているという。

 研究グループのバルメントロ氏は、「近年、ネオニコチノイドにより厳しい規制が実施され、チアクロプリドも現在再評価されています。将来的な使用量の減少は、イトトンボ類の回復する可能性に希望を与える」としている。

 EUは昨年12月、イミダクロプリドなど3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外使用を禁止したが、今回のライデン大学の研究グループが対象としたチアクロプリドについて、アセタミプリドとともに屋外禁止3農薬の代替品として推奨している。チアクロプリドは、現在再評価中であり、2020年4月まで1年間の登録が延長されている。フランスは昨年9月、チアクロプリドを含む5種類のネオニコチノイド系農薬の使用を禁止している。

 ・Journal of Applied Ecology, 2019-7-2  ・Leiden University, 2019-7-2

 日本でも2016年に、浸透移行性の殺虫剤フィプロニルとクロチアニジン(ネオニコチノイド系)、クロラントラニリプロールがシオカラトンボなどのトンボ類に悪影響を与えるという研究結果を国立環境研究所の研究グループが発表している。

 ・国立環境研究所, 2016-3-16

 カナダもネオニコチノイド系農薬の水生昆虫へのリスクを重視し規制を強化しようとしている。カナダ保健省は昨年(2018年)8月、ネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンとチアメトキサムについて、ハチではなく水生昆虫などへのリスクを考慮し、3年から5年かけて屋外使用を禁止する方針を示し意見公募を実施している。

 ・AFP, 2018-8-15

 ミツバチ大量死の原因の一つとしてネオニコチノイド系農薬が焦点化し、欧米では規制が進んでいる。中でもEUは2018年12月、3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外使用を禁止したが、ライデン大学や国立環境研究所の研究でも明らかなように、その影響はミツバチに留まっていない。


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