農民連食品分析センターは7月29日、自主検査で輸入ワインからネオニコチノイド系農薬をを含む21種類の残留農薬を検出したと発表した。調査したワインは、昨年5月から11月にかけて入手した世界各地の14か国の2銘柄で、うち有機ワイン4銘柄。非有機ワイン19銘柄からは、ネオニコチノイド系を含めて複数の何らかの農薬成分が検出され、うち13銘柄からは除草剤のグリホサートが検出されたという。有機ワイン4銘柄からは残留農薬は、痕跡を含めて検出されなかったという。
サンプルの輸入ワインは、通販や実店舗、協力者からの寄贈などにより入手したもので、フランスの8銘柄のほかアルジェリア、インド、ウクライナ、ウルグアイ、キプロス、スペイン、タイ、チュニジア、チリ、ベトナム、モルドバ、ルーマニア、ロシアが各1銘柄。
検出された残留農薬は、アセタミプリドなど4種類のネオニコチノイド系を含む10種類の殺虫剤、除草剤としてグリホサート、10種類の殺菌剤だったという。
農 薬 名 | 検出数 | 分析結果 (ppm) |
---|---|---|
アセタミプリド | 1 | 0.001 |
イミダクロプリド | 6 | 0.001 〜 0.133 |
チアクロプリド | 1 | 痕跡 |
チアメトキサム | 6 | 痕跡、0.001 〜 0.012 |
グリホサート | 13 | 痕跡、0.001 〜 0.005 |
フランスは2018年9月から、アセタミプリドなどの5種類のネオニコチノイド系農薬を禁止しているが、規制前の2014年産、2015年産の非有機のフランス産6銘柄から、チアメトキサムなどの複数の農薬が検出されている。ネオニコチノイド系は残留性が高いが、来年のボジョレー・ヌーボーから検出されなければ、2019年以降のフランス産ワインはネオニコ・フリーとなりそうだ。しかし、検査した6銘柄のうち5銘柄からグリホサートが検出されており、一般的にグリホサートが使われていることが予想され、しばらくはグリホサート・フリーとはなりそうにない。
この検査結果について農民連食品分析センターは、「いずれも基準を超過するものではないと判断することができ、食品衛生法上、問題無く安全であると評価されるものです」としている。
一方で、今年7月1日に発表された獨協医科大学・市川剛医師らの研究で、胎盤を通して母体から胎児に、ネオニコチノイド系農薬の一つのアセタミプリドの代謝物(DMAP)が移行することが世界で初めて確認されている。研究グループは、いくつかの動物実験でアセタミプリドが神経発達に悪影響を与えることが報告されていると指摘し、「胎児および新生児期は神経発達に非常に重要な時期であり、子宮内で胎児に移行、蓄積するという観点から、アセタミプリドの安全性について再検討が必要である」としている。
・PLOS ONE, 2019-7-1また、グリホサートについては 国際産婦人科連合が先ごろ、「健康に対する化学物質曝露の影響を裏付ける証拠があります。化学物質は胎盤を通過する可能性があり、メチル水銀の場合と同様に、胎児に蓄積する可能性があり、長期的な後遺症を引き起こす可能性があります」として、予防原則に則り、世界規模でグリホサートの禁止を勧告している。
・International Federation of Gynecology and Obstetrics, 2019-7-31これらの研究と勧告はいずれも胎児への影響を懸念している。国際産婦人科連合が指摘するように予防原則に立てば、明確な影響が確認されないとしても、その可能性が懸念されるからには、妊娠前から有機農産物を摂っている方がより確かだ。
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