最終更新日:2019年8月10日
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2019.08.10 No.996
■米国:ネオニコで農地の昆虫毒性は48倍に 新たな「沈黙の春」か
natural_hive.jpg / Flickr
野生ミツバチの巣 / Eileen Fonferko / Flickr

 米国のトキシコロジー・リサーチ・インターナショナル(Toxicology Research International)などの研究グループは、90年代にネオニコチノイド系農薬が導入されて以降、この約25年間に米国の農業環境における昆虫への経口毒性は48倍増加し、その92%がネオニコチノイド系農薬に起因するという研究結果を専門誌(PLOS ONE)に発表した。研究グループは、この増加について、ミツバチや他の花粉媒介者(ポリネーター)を脅かす可能性があり、有益な昆虫の個体数だけでなく、食虫性の鳥や他の肉食性昆虫の減少の一因ともなると警告している。

 研究グループは、米国の農地とその周辺地域での急性殺虫剤毒性負荷(AITL)を、経口毒性と接触毒性に分けて算出している。殺虫剤の経口AITLの合計は、接触AITLの合計よりも桁違いに大きいとしている。その上で、ネオニコチノイド系のイミダクロプリドとクロチアニジン、チアメトキサムがこの毒性負荷の増加の主な原因であり、2014年のすべての殺虫剤の総毒性負荷の接触毒性61%から経口毒性の99%を占めていると分析している。これらのネオニコチノイド系は、半数致死量(LD50)が比較的高く、花粉や蜜などの環境中の残留物からの暴露の可能性が高いと指摘している。

 毒性負荷のこの増加は、近年観察された有益な昆虫と食虫性の鳥の個体数の減少と一致しているとしているが、明確な関連性の実証には、定量化などより詳細な分析が必要だとしている。50年前、レイチェル・カーソンは『沈黙の春』を書き、DDTなどの農薬の危険性を警告したが、米国では新たな「沈黙の春」がやってきているのだろうか。

 ・PLOS ONE, 2019-8-6  ・Friends of the Earth, 2019-8-6  ・National Geographic, 2019-8-6  ・Guardian, 2019-8-7

 研究グループによると、昆虫毒性急増の原因となる対象作物からみると、AITLの増加に最も寄与している作物は、大豆とトウモロコシであるとしている。ことに大豆は、2010年から2014年の間にAITLへの寄与が、相対的に大きく増加していと指摘している。

 このことは米国地質調査所(USGS)の農薬使用マップでも明らかであり、2010年を境に大豆へのイミダクロプリドの使用量が急増している。クロチアニジンの使用量のほとんどはトウモロコシであり、こちらも2010年を境に使用量が急増している。米国の大豆とトモロコシは、いずれもその9割以上が遺伝子組み換え品種である。遺伝子組み換えによる単一栽培農業が、昆虫への脅威を増大させている大きな要因の一つということになる。

 ・USGS

 このように大量に使われているネオニコチノイド系農薬が農家の収入に寄与しているかといえば、ネオニコチノイド系農薬は農家に利益をもたらしてはいないばかりか、環境汚染の原因を作り出しているという。

 米国環境保護庁(EPA)は2014年、ネオニコチノイド系農薬による大豆の種子処理は、その他の葉面散布の農薬と比べて収益を上げない無駄なことだ、という研究結果を公表している。

 2003年のバイエルの研究者の報告によれば、種子にコーティングされたイミダクロプリドのわずか5%だけが植物に吸収されるにすぎず、残りは環境中に放出されるという。収益を上げず、環境を汚染し昆虫を減少させるという無駄なことをやっているということになる。

 ・EPA, 2014-10-16  ・Bulletin of Insectology, 2003

 このところ、今回の研究結果が指摘している昆虫や他の種の減少を警告する研究結果がいろいろと発表されている。

 オーストラリア・シドニー大学などの研究グループは今年1月、工業的な集約農業による生息地の現象と農薬使用や気候変動により昆虫の40%以上が絶滅の危機にさらされているとする研究結果を専門誌に発表している。昆虫が急激に減少し、過去5億年の間で6回目となる「大量絶滅」の一環だと指摘、警告している。

 ・Biological Conservation, 2019-1-31  ・AFP, 2019-2-12

 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)は今年5月、総会で承認された地球規模の生物多様性に関する報告書を公表し、前例のない自然の危険な衰退が起きており、種の絶滅が加速し100万種が絶滅の危機に瀕していると警告している。

 ・IPBES, 2019-5-6

 国連食糧農業機関(FAO)も今年2月、生物多様性崩壊の危険性を警告する報告書を発表している。食用に栽培される6千種の植物のうち200種が多くを占め、総生産量の66%をわずか9種に依存しているにすぎないと指摘し、家畜生産はわずか40種に依存し、7千種余りの家畜動物の26%が絶滅危機にあるとしている。また、魚資源の3分の1近くが乱獲されており、半分以上が持続可能な限界に達しているとしている。

 ・FAO, 2019-2-22

 これらはいずれも原因の一つに農薬の多用を上げ、生態系の破壊、種の絶滅危惧などを懸念している。食用作物の多くがミツバチなどの昆虫による受粉に依存している以上、昆虫の減少が食料生産の減少につながることは明らかなことだ。

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