米国・ウィスコンシン大学などの研究グループは9月9日、米国の大豆作付の50%で使われているネオニコチノイド系農薬による種子処理は、多くの場合不要であり、ほとんど経済的利益をもたらさないという研究結果を発表した。米国環境保護庁(EPA)は2014年、ネオニコチノイド系農薬による大豆の種子処理が経済的に無意味であるという、今回の発表と同様の分析結果を発表している。
研究グループは、米国の14州における12年分の大規模データの分析の結果、現状のような無差別にネオニコチノイドで処理した種子を使い続ける実証的な裏づけが得られなかったという。収量に対する便益はあったとしてもわずかであり、加えて殺虫剤としての効果がないということだとしていて、全くの無駄な出費だという。その上で、「意味のある利益」は、圃場ごとに特有な管理の実践の結果である可能性を示唆するとしている。
・University of Wisconsin-Madison, 2019-9-9 ・Cool Bean, 2019-9一方で、ネオニコチノイド系農薬の非標的生物への影響は、ミツバチのような花粉媒介生物から水生昆虫や鳥類にまで及んでいる。このことは、この間のいくつもの研究結果が示している。ネオニコチノイドで処理した種子の使用は、大豆栽培の収益にプラスにならない無駄な出費の上に、大豆に被害を与えることのないミツバチのような受粉媒介生物を害し、環境に影響を与えるという、無駄に無駄を重ねた壮大な無駄ということになる。一方では、ネオニコチノイド系農薬を製造・販売しているバイエルやシンジェンタ、住友化学のような農薬企業だけが利益を得ているということでもある。
2014年の米国環境保護庁(EPA)の実証的な研究結果は、あらかじめネオニコ系農薬(イミダクロプリド、チアメトキサムとクロチアニジン)で処理された種子を使ったとしても、同じ様な効果の農薬を葉面散布することで同様の効果が得られ、収益差は1%ほどだったという。種子処理された種子の使用は無駄なことだと結論している。
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