最終更新日:2019年9月13日
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2019.09.13 No.1008
■遺伝子組み換えカイコに求める活路 研究機関の延命に終るだけの可能性
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遺伝子組み換え生糸=2018年5月

 農水省は9月13日、「新蚕業プロジェクト方針」を公表した。この方針では、遺伝子組み換えカイコによる機能性生糸やタンパク質生産に活路を見出そうとしている。この30年で養蚕農家は高齢化し、その戸数も300戸ほどに急減した。2万7千トンあった繭の生産量は110トンまでに落ち込んでいる。一方で、生糸や絹糸の輸入により国産のシェアはほとんどないも同然だという。このプロジェクト方針は、こうした養蚕の苦境を盛り返そうというものだが、実用化の壁にぶち当たっている農研機構などの遺伝子組み換え技術開発部門維持の側面もありそうだ。

 ・農水省, 2019-9-13

 農水省のまとめによれば、1988年に5万7千戸あった養蚕農家が2万7千トンの繭を生産したが、30年後の昨年、養蚕農家は293戸、生産量も110トンと激減している。そして、養蚕農家の6割が70歳以上と高齢化も進んでいる。当然のこととして、53あった製糸工場も2つに減っている。競争力を失った国産養蚕農家の救済策として登場したのが、機能性を付け加えた生糸であり、それを生み出す遺伝子組み換えカイコの開発と実用化だ。

 国は遺伝子組み換えを推進の立場の農水省は、農研機構でその技術開発を進めてきたが、一つは、依然として実用化に届かない病害耐性遺伝子組み換え米であり、遺伝子組み換え花粉症緩和米であり、もう一つがクラゲやサンゴの遺伝子を組み込み蛍光発色生糸を生産する遺伝子組み換えカイコである。

 遺伝子組み換えカイコは2017年9月、それまでの隔離飼育施設での隔離飼養から、養蚕農家での飼養が可能な一般使用により承認された。今年9月12日にも、同系統の交配後代を含む遺伝子組み換え蚕が一般使用で承認されている。

 2018年、群馬県前橋市の養蚕農家がこの遺伝子組み換えカイコを飼養して176キロの繭を生産した。この繭は、長野県岡谷市の蚕糸博物館内にある宮坂製糸所で生糸に加工され、京都でインテリア製品に加工されたという。

 ・農水省, 2019-9-12  ・朝日, 2018-9-13

 今回公表の新蚕業プロジェクト方針は、「シルクを利用した新たな市場創出と、需要にあった生産体制の構築」に向けて、遺伝子組み換えカイコの生産体制の強化と遺伝子組み換えカイコの利用拡大をあげている。しかし、消費が冷え込み、日本経済の縮小がいわれる中で、新たな需要が生まれる可能性があるのだろうか。この新蚕業プロジェクト方針では、蚕農家の減少にストップをかけ、その若返りへのカンフル剤となりえるのか。単なる農研機構の遺伝子組み換え開発部門の維持に終わるだけの可能性が強そうだ。

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