2004年に発効した食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)は、この11月11日からローマで、遺伝資源へのアクセスと利益配分の運用を主な議題として第8回全体会議を開催する。この会議に対してアフリカ生物多様性センター(ACB)と第3世界ネットワーク(TWN)は、遺伝資源を提供する先住民や農民の立場に立った交渉を要求するレポートを発表した。
食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)は、先進国による遺伝資源収奪、海賊行為に対して、多国間システムによって一定の手続き(制約)と基金への拠出(対価)を取り決めた国際的な枠組みである。この条約は2004年に発効し、2018年12月現在、143か国とEUが加盟しているが、日本は2013年に加入している。しかし、日本以外のG7各国は署名したものの加入していないし、中国とロシアは署名もまだである。
食料・農業植物遺伝資源条約は、主に先進国側企業となる利用者が、遺伝資源を提供した側に売上高の約1%を基金へ支払うことにより遺伝資源を合法的に使うことができるように国際的な枠組みを取り決めている。11月からの全体会議では、条約の標準材料移転契約(SMTA)の改定と適用範囲の拡大が話し合われるという。
レポートは、交渉による新たな改定の目的が、農民の農業生物多様性の保全を支援する資金である「種子産業」が支払う利益分配基金への強制的な支払いの増額であるはずが、「先進国はゴールポストを動かそうとしている」と非難している。
レポートはこの分担金の支払いについて、先進国側は企業が十分な分担金の支払いを保証する義務を受け入れることなく、発展途上国に対してさらに多くの種を投入することを要求していると指摘。その結果、発展途上国側の分担金増額を求める交渉意欲が落ちているしている。この状況に、開発途上国は小規模農家や先住民、地域社会の利益を保護し、公平かつ公平な利益分担の理念を取り戻さなければならないとしている。
新たな協定は、農業の生物多様性を支援するために、利益分配基金に先進国側が少なくとも年間5千万米ドルを拠出することを明確にして農民の権利を尊重しなければなならないという。この合意ができないならば、この多国間システムにさらに多くの遺伝資源を提供することになり、現状をより悪化させることから、発展途上国側は協定改訂を拒否すべきだとしている。
先進国による遺伝資源収奪を防ぎ、利用による利益の配分が目的というこの多国間システムも十分ではないという指摘を踏まえ、アフリカ生物多様性センター(ACB)が主張するように、遺伝資源を提供する先住民や農民の立場に立った改定が必要だ。
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