最終更新日:2019年12月10日
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■オーストリアのグリホサート禁止にも暗雲 
glyphosate_spray.jpg / Flickr
 グリホサートを散布する / Chafer Machinery / Flickr

 オーストリアのブリギッテ・ビアライン首相は国会議長に書簡を送り、来年1月1日からのグリホサート禁止を施行しないと伝えたと各誌が報じた。書簡では、欧州委員会はグリホサート禁止の措置に関する必要な通知を伝達されておらず、禁止は実施できないといい、また、禁止施行の見送りは「正式な決定である」としているという。タイに続いてオーストリアのグリホサート禁止にも暗雲が立ちはだかっている。

 ・The Local, 2019-12-9

 この連邦政府の動きに対してグリーンピースは、グリホサート禁止を阻止することは「民主主義に対する裏切りと同じ」だとコメントし、禁止を求め7月議決を主導した社会民主党は「理解できない」として議会で禁止の実施を求めるという。一方、「国民党の一部である農民組合」(ロイター)は、グリホサート禁止はEUの規制の範囲内であるべきだとしているという。

 オーストリア国民議会は今年7月、来年1月からのグリホサート禁止法案を可決していた。今回の動きは、必要な手続きを進めなければならない暫定連邦政府が、自らサボタージュしていたということだ。

 オーストリア連邦政府は5月、それまでの国民党と極右の自由党の連立政権であったが、自由党の副首相のスキャンダルで内閣不信任が可決されたため、6月に最高裁副長官であったビアライン氏を首相とする暫定政権が発足している。

 7月、オーストリア国民党(OePV)は反対したものの、グリホサート禁止を求めていた社民党などとともに極右の自由党が賛成に回り、20年1月からのグリホサート禁止法案が可決された。この法案では欧州委員会の同意が施行の条件であったという。法案に反対した国民党は「その除草剤を適切に使用している農民への平手打ち」であるとして、この議決を酷評した。

 その後、9月の総選挙により、禁止反対だった国民党が勝利したものの連立交渉が続き、ビアライン暫定政権が続いている。国民党は緑の党と連立交渉を続けているが隔たりが大きいという。

 9日付のロイターは、国民党と自由党の連立政権下で最高裁副長官に指名された現暫定政権のビアライン暫定首相が「政治化されたシステムの一部」だとして、暗にEUへの手続き不備が国民党の意を慮ったものと示唆している。

 ・Reuters, 2019-12-9  ・AP, 2019-12-9  ・Deutsche Welle (DW), 2019-7-3

 Euractiv(電子版)は12月3日、オーストリアのグリホサート禁止に関する欧州委員会の手続きが11月末に完了したと報じた。この禁止に関して他の加盟国からのコメントは、欧州委員会とイタリアからの2件に過ぎなかったという。しかし、同時に禁止を施行した場合、法的な問題が生ずる可能性があるともしていた。同紙はまた、連邦政府環境省に施行について確認したところ、何も確定していない模様だと報じていた。

 ・Euractiv, 2019-12-3  ・AFP, 2019-12-3

 EU域内の登録延長を決められなかった欧州委員会は、2017年12月、グリホサートの登録期限ぎりぎりのタイミングで、通常は15年の登録期限であるところ5年の登録期限として22年12月までの登録延長を提案して、ようやく加盟国の賛成を得られた。EUの規則では、農薬の登録延長は、登録期限の3年前までに申請書を提出しなければならない。このため、22年12月の期限切れを前に新たな登録手続きが始まっている。

 ・EU
  Griphosate
 (EUの農薬プロセス)
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