米国の2つの環境NGO、生物多様性センター(Center for Biological Diversity)と食品安全センター(Center for Food Safety)は8月20日、米国環境保護庁(EPA)を相手取って、ネオニコチノイド系スルホキサフロルの適用拡大を取り消すよう連邦地裁に提訴した。米国環境保護庁は今年7月、スルホキサフロルの規制緩和を行っていた。
グリーンピース・ジャパンは8月23日、この間集めてきた着色粒規定など農薬の過剰使用につながる現行規定の見直しを求める署名約1万9千筆を、生協連コープ自然派事業連合、米の検査規格の見直しを求める会、生き物共生農業を進める会ととも農水省に提出した。農水省は、米の検査規格の見直しを今年8月までに行うとして、「農産物規格・検査に関する懇談会」を今年1月以来3回開催してきた。この署名は、この見直しに農家や消費者の声を反映させようと行われていた。俎上に上がっている米の検査規格の中でも、着色粒規定がネオニコチノイド系などの農薬の過剰使用の元凶といわれてきた。
アフリカ生物多様性センター(ACB)とアフリカ食料主権連合(AFSA)は8月16日、グリホサートに関する報告書を発表し、同時にグリホサートの禁止を求めるウェブ署名(8月26日まで)を始めた。アフリカでは唯一マラウイがグリホサートを含む除草剤の輸入を禁止しているが、同センターは、近く輸入再開されるかもしれないと危惧し、欧米で禁止される農薬が、規制の緩やかなアフリカなどの発展途上国に流れ込むことを懸念している。
食品安全委員会は8月6日、米国のシンプロット社の疫病耐病性・アクリルアミド生成量低減遺伝子組み換えジャガイモ(SPS-000Y9-7)について「ヒトの健康を損なうおそれはない」とする遺伝子組換え食品等専門調査会の健康影響評価を了承し意見公募を始めた。締切りは9月5日。
厚労省は8月16日、今年3品目目となるダニスコ社(米国)の微生物を利用した遺伝子組み換え添加物プルラナーゼを承認した。現在、食品安全委員会で審査中や承認手続き中の遺伝子組み換え添加物は10品目に上る。今回のプルラナーゼを含め、これまでに承認された遺伝子組み換え添加物は43品目となる。
オーストラリア・タスマニア州政府はこのほど、2001年以来続けている遺伝子組み換え(GMO)作物栽培禁止を10年間延長する方針を決めた。GMO禁止を規定している2014年の遺伝子組み換え生物管理法が今年11月で失効するため、新たな改正案が議会で審議される予定だという。
小樽・子どもの環境を考える親の会は昨年11月、100円ショップのダイソーを展開している大創産業が、グリホサート系除草剤の販売を在庫限りとして販売を中止すると回答したと発表している。大創産業は代替品として酢を使った除草剤の販売を始めている。このダイソーの販売中止は評価できる。日本の小売大手としては初めてのケースではないか。
米国のトキシコロジー・リサーチ・インターナショナル(Toxicology Research International)などの研究グループは、90年代にネオニコチノイド系農薬が導入されて以降、この約25年間に米国の農業環境における昆虫への経口毒性は48倍増加し、その92%がネオニコチノイド系農薬に起因するという研究結果を専門誌(PLOS ONE)に発表した。研究グループは、この増加について、ミツバチや他の花粉媒介者(ポリネーター)を脅かす可能性があり、有益な昆虫の個体数だけでなく、食虫性の鳥や他の肉食性昆虫の減少の一因ともなると警告している。
農民連食品分析センターは7月29日、自主検査で輸入ワインからネオニコチノイド系農薬をを含む21種類の残留農薬を検出したと発表した。調査したワインは、昨年5月から11月にかけて入手した世界各地の14か国の2銘柄で、うち有機ワイン4銘柄。非有機ワイン19銘柄からは、ネオニコチノイド系を含めて複数の何らかの農薬成分が検出され、うち13銘柄からは除草剤のグリホサートが検出されたという。有機ワイン4銘柄からは残留農薬は、痕跡を含めて検出されなかったという。
農水省は8月7日付けで2種類のグリホサート剤を農薬登録した。一つは三井化学アグロの「アース草消滅」で果樹や野菜を広くカバーしている。もう一つは住友化学園芸の「草退治メガロングFL」で樹木などを対象としている。いずれもグリホサートイソプロピルアミン塩。これにより、8月8日現在110種類のグリホサート農薬が登録されている。2019年の新規登録は4種類となる。
獨協医科大学・市川剛医師らの研究グループは7月1日、ネオニコチノイド系農薬が胎児に移行する可能性を示唆した研究結果を専門誌(PLOS ONE)に発表した。出生直後の尿からネオニコ系のアセタミプリドの代謝物質を検出し、「アセタミプリドの有毒な代謝産物であるDMAPが、胎児に高率で移動する可能性があることを示唆した世界初の報告」だという。そして「ネオニコチノイドおよび代謝物の神経発達毒性の可能性を検討する必要があることを示している」としている。
産婦人科医の国際組織である国際産婦人科連合の発生環境衛生委員会は7月31日、この15年間に明らかになったエビデンスから、予防原則に則り、世界規模でのグリホサート禁止の勧告を発表した。この勧告は、これまでに積み上げられてきた知見を元にした専門家の提言であるだけに、軽々に無視することはできない。
米国環境保護庁は7月18日、北米農薬行動ネットワークなどの米国の環境NGOが求めていた有機リン系殺虫剤クロルピリホスの使用禁止を拒否した。一方、欧州食品安全機関(EFSA)は8月2日、2020年1月に登録期限が来るクロルピリホスについて、評価は完全に終わっていないが、承認更新に要求されている基準を満たしていないと発表した。EUでは期限切れで使用禁止になりそうだ。
- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増