
国立環境研究所はこのほど、化学物質データベースを更新し、2018年度の農薬出荷量データを公開した。グリホサートの出荷量は、2010年から右肩上がりに増加してきているが、2018年は前年から約500トンと急増した。伸び率は前年比8.8%と、2011年以来最も大きな伸び率となった。2010年から出荷量は49%、約2千トン増加している。

・国立環境研究所
2015年に国際がん研究機関がグリホサートを「おそらく発がん性がある」と判断した。その後も2019年には産婦人科医の国際組織である国際産婦人科連合が、この15年間に明らかになったエビデンスから、予防原則に則り、世界規模でのグリホサート禁止を求める勧告を発表した。同委員会は声明で、「健康に対する化学物質曝露の影響を裏付ける証拠があります。化学物質は胎盤を通過する可能性があり、メチル水銀の場合と同様に、胎児に蓄積する可能性があり、長期的な後遺症を引き起こす可能性があります」と述べている。
また、米国では2018年以来、3件のラウンドアップ損害賠償訴訟で、モンサントを買収したバイエルに数十億円の損害賠償を支払うよう命ずる判決が下されている。
このように、国際的には健康影響が懸念されるグリホサートだが、日本では右肩上がりで出荷量は伸びており、こうした健康影響に対する警告は考慮されていない。
国際的にはグリホサートの規制が進んでいる。フランスは昨年12月、フランスで流通しているグリホサート製剤の流通量の4分の3に達する36剤について、全成分の科学的データが不足しているとして農薬登録の取消した。準備を進めてきたルクセンブルグは先ごろ、今年12月末にグリホサートを禁止すると発表した。フィジーでも今年12月末にグリホサートが禁止される、と地元紙が報じている。
農水省は、21年度から始まる農薬再評価に関して、ネオニコ系とともにグリホサートを優先評価の対象とすると発表している。その一方で、昨年には12種類のグリホサート系農薬を新規に登録した。今年に入り、3月に1種類を新規に登録している。
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