タイ国家有害物質委員会は4月30日、グリホサートの使用規制とパラコートとクロルピリホスの禁止について、昨年11月の決定の通り6月1日より実施することを賛成多数で決めた。グリホサートも昨年の決定通りで、禁止されないが5月23日より規制が強化され使用が制限されるという。
タイは昨年11月27日、米国による特恵関税適用除外という経済報復に屈し、昨年12月1日の実施直前になって、グリホサートの禁止を使用規制の強化に緩和し、パラコートとクロルピリホスの禁止を今年6月まで延期した。しかし、米国は、その後もタイの特恵関税適用除外を撤回していないままだという。
規制開始が間近になり、タイ商工会議所は最近、コロナ禍で食品業界への原材料供給に問題が生ずるとして、3農薬の規制実施を12月へ延期するように政府に求めていた。保健大臣は4月28日、食品業界の問題より人の健康問題が重要であるとして規制延期を認めないと明言していた。3農薬禁止を求めてきたタイの市民団体なども、規制実施の延期に懸念を表明していた。
4月30日に開催された国家有害物質委員会は、3農薬の規制について既定方針を踏襲することを決定し、農業・協同組合省でパラコートとクロルピリホスの代替品を選定するように命じたという。
3農薬禁止を求めて共同でキャンペーンを展開してきたタイ農薬警戒ネットワーク(タイPAN)のウサップさんは、この規制先延ばしについて「有害な農薬使用に関する公共の安全性を高め、持続可能な農業の実践を強化することになる」「国家有害物質委員会は、国民に対して正直に話すべきである。期限を延長する理由は見当たらない。持続可能な農業を支援する真摯な姿勢を国民に示すべき時期に来ている」と述べたという。
・Bongkok Post, 2020-5-1 ・Bangkok Post, 2020-4-29 ・Nation, 2020-4-29 ・National Thailand, 2020-4-30クロルピリホスは有機リン系殺虫剤の一種であるが、EUが今年1月登録期限切れで更新されず失効している。米国での製造トップメーカーのコルテバは今年2月、20年12月までにクロルピリホスの生産を停止すると発表した。
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