最終更新日:2020年6月9日
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2020.06.09 No.1042
■米連邦控訴裁判所 除草剤ジカンバの農薬登録を取消す
dicamba_cupped_leaves-2.jpg / Flickr
除草剤ジカンバで被害を受け、葉がカップ状に変形した大豆 / uacescomm / Flickr

 米連邦控訴裁判所は6月3日、米国環境保護庁(EPA)による、除草剤ジカンバ耐性遺伝子組み換え作物を対象とした農薬登録について、広範囲にわたる漂流により大きな被害を出していて、リスクを実質的に過小評価していたとして登録無効の判決を下した。この登録無効裁判は、全米国家族農業連合(NFFC)と食品安全センター(CFS)、生物多様性センター、国際農薬行動ネットワーク・北米(PAN NA)の4団体が米国環境保護庁を相手取って起こしていたもので、農民と市民が勝利判決を勝ち取った。裁判には、被告の米国環境保護庁の補助参加人としてモンサントが名を連ねている。

 米国環境保護庁は2016年、バイエルとBASF、コルテバのジカンバ製剤を2年限定期限で農薬登録した。2018年10月、すでに各地で漂流性の高いジカンバによるジャガイモなどの被害が出ていたのも関わらず、この登録を2020年12月まで、さらに2年延長した。この延長に対して、全米国家族農業連合(NFFC)など4団体が、登録取り消しを求めて提訴していた。

 原告の食品安全センターなどは3日、判決を歓迎する声明を発表した。その中で「今日の判決は、農家と環境にとって大きな勝利です」「モンサントような企業やトランプ政権が、法の支配から逃れることはできないということを思い知らされるのは良いことです。彼らに報いの日が来たのです」という談話を掲載した。

 ・連邦控訴裁判所, 2020-6-3
  判決
 ・Center for Food Safety, 2020-6-3  ・Center for Biological Diversity, 2020-6-3

 一方、この判決を受けて米国環境保護庁・ウィーラー長官は5日、「我々はこの決定に失望している。2020年の栽培シーズンは順調に進んでおり、農家に不当な負担を生じさせる。裁判所の判決が農家に与える影響を緩和するためのあらゆる手段を評価している」との声明を発表した。

 さらに、米国環境保護庁は8日、裁判所の判決が登録無効としたにもかかわらず、判決日の6月3日時点で在庫していたジカンバ製剤を7月末まで使用してよいと発表した。環境保護庁はまた、法的権限に基づいて使用を認めたとしている。

 原告4団体は8日、環境保護庁の使用許可を非難する共同声明を発表した。その中で、「米国環境保護庁はジカンバによる多大な被害を無視してきました」「農家と国民に対する米国環境保護庁の義務を怠っています」と指摘した。この使用許可により、ここ数年、周辺農家が受けてきた、ジカンバの漂流、拡散による被害再発を懸念している。米生物多様性センターなど原告の発表では、今シーズン約1万トンの使用が見込まれていたという。また、今年、栽培される遺伝子組み換え大豆の6割が、ジカンバ耐性品種だとみられているという。

 ・EPA, 2020-6-5  ・EPA, 2020-6-8  ・Center for Food Safety, 2020-6-8

ラウンドアップ耐性雑草対策で新たな除草剤耐性作物

 ラウンドアップ(グリホサート)耐性の枯れないスーパー雑草対策に苦慮していたモンサントは、2007年ごろからグリホサートに代わる除草剤としてジカンバに着目し、ジカンバ耐性遺伝子組み換え作物の開発を進めていた。米国は2015年、ジカンバ耐性大豆と綿の栽培を承認した。

このジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆の商業栽培の開始により、大豆圃場周辺へ漂流し広がったジカンバが、果樹やジャガイモなどジカンバに耐性のない作物に被害を及ぼし、大きな問題となっている。一部の州では、時期を区切って使用を禁止するなど規制を強化している。

 バイエルは今年2月、年次報告書においてジカンバによる損害賠償請求訴訟について、170名の農家が損害を被ったとして、BASFとともにバイエルに対して賠償請求訴訟を起こしていると明らかにしている。今年2月には、桃農園がジカンバにより枯れたとして1500万ドルの賠償と2億5千万ドルの懲罰的賠償を命ずる判決が下されている。この判決に対してバイエルは、速やかに控訴するとしている。一方、原告は、裁判所に対して集団訴訟として扱うように求めているとしている。

 ・Bayer, 2020-2-27

 ジカンバ損賠訴訟の背景には、90年代以降、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え作物(大豆、トウモロコシ、菜種、綿)の栽培拡大によってラウンドアップでも枯れないスーパー雑草の増大がある。モンサントはスーパー雑草対策として除草剤ジカンバ耐性GM大豆を開発した。

 しかし、グリホサートに代わる除草剤耐性作物を開発したとしても、商業栽培が始まれば、トータルで除草剤使用が増大するという研究が2012年に発表されている。ペンシルベニア州立大学などの研究グループは、ジカンバ耐性作物の商業栽培開始がトータルで更なる除草剤使用量の急増を招くとする分析を発表している。結局、新たな除草剤耐性作物の開発とスーパー雑草のいたちごっこは終わりを知らないということだ。

 ・BioScience, 2012-1-1

がんの発症リスクが増加 米国立研究所が発表

 米国国立衛生研究所の研究クループは5月、ジカンバが肝臓がんや肝内胆管がん、急性/慢性リンパ性白血病など多くの種類のがんの発症リスクが高まると発表した。この研究は、ジカンバとがんとの関連性に関するこれまでの疫学的研究の中で最も包括的なものだという。この研究では、アイオワ州とノースカロライナ州の約5万人の農薬散布者を20年以上にわたって追跡調査し、農薬の使用とがんの発生分析している。著者らは結論として、「肝臓と肝内胆管癌のこの最初の評価では、ジカンバの使用量の増加との関連性がある」としている。

 生物多様性センターの科学者でもあるドンリー氏は、「この広範囲にわたる研究は、ジカンバの使用を拡大するという米国環境保護庁の無謀な決定がもたらす、恐ろしい人的コストを露呈している」とコメントしている。

 ・International Journal of Epidemiology, 2020-5-1  ・Center for Biological Diversity, 2020-5-4

米国産小麦の残留ジカンバは増大傾向

 農水省は半期ごとに、輸入米麦の残留農薬検査結果を公表しているが、この5年ほど、輸入小麦から毎年のようにジカンバが検出されている。2017年にフランス産1検体から検出された以外は、すべて米国産〜検出されている。小麦の残留基準値が2ppmに対して0.1ppm以下と量的には少ないが、検出率は年々急激に増加している。2015年に0.8%だったものが2019年(前期分)では14.3%と増加している。

 ・農水省
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 厚労省はこれまでに、米国でのジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆の商業栽培に先立ち、いくつかのジカンバ耐性品種を食品として承認している。日本にもすでに輸入されているとみて差し支えないだろう。

 農民連食品分析センターではこれまでに、ジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆の検出キットを用意し、検査の相談に備えているという。また、除草剤としてのジカンバの検査体制を整備するという。

JR九州 ジカンバを使って周辺の大豆や稲に被害

 国立環境研究所の化学物質データベースによれば、日本での昨年の出荷量は4トン余りと少ないが、一昨年、JR九州が鹿児島線の線路でこの除草剤ジカンバを使い、周辺の田んぼや大豆に被害が出ている。

 2018年9月、JR九州が福岡県の鹿児島線の線路で散布した除草剤ジカンバが、周辺の大豆の生育不良を起こしたり、稲からも検出されていることが明るみになっている。新聞報道によれば、JR九州は九州7県の全ての在来線で、作業車両を使ってジカンバを散布していたという。問題が発覚したみやま市の鹿児島線では2回実施されたという。また、稲の葉から微量のジカンバが検出されたことで、「安全性が確認できない」として、収穫済みの約7トンの米の出荷を見合わせているという。

 ・西日本新聞, 2018-9-26  ・日経, 2018-9-26

 日本消費者連盟は先ごろ、鉄道各社に対してグリホサート使用に関する公開質問状を送った。回答した各社は押し並べて、グリホサートを含めてどのような除草剤を使っているか明らかにしていない。また、公的な統計もないようで、日本の鉄道での除草剤の使用は良く分からない。

 ジカンバ(MDBA)は、17剤が登録されている(2020年5月10日現在)。現在、1977年10月に登録されたものが一番古い。国立環境研究所のまとめによれば、農薬として出荷されているジカンバは、1978年から年間数トンが出荷されている。2000年以降では年間4トン前後が出荷されている。その出荷量は少なく、年間6千トン余りが出荷されているグリホサートの一千分の一以下となっている。適用作物も芝や樹木、牧草と限られているため、圃場では使用できない。

 一方、農薬としてではなく、2018年に被害が明らかになった、鉄道線路での除草などのような使い方もされているが、農薬外の出荷量は明らかではない。こうした農薬以外の「農薬成分」についても、家庭用を含め使用量をきちんと公開させるべきではないか。

(参考)
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