近畿大学と筑波大学や国立遺伝学研究所などの研究グループは7月1日、ミツバチなどのニコチン性アセチルコリン受容体が花粉などに残留するより低い濃度のネオニコチノイド系農薬で影響を受ける、と米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。今回の研究は、ネオニコチノイド系農薬について、昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体そのものの応答を調べたもので、世界初の成果だとしている。
研究グループは、ハナバチ類の脳にあるニコチン性アセチルコリン受容体を、体外で神経細胞に存在したときと同様のはたらきを示すように組み立てなおし、イミダクロプリド、チアクロプリド、クロチアニジンの3種類のネオニコチノイド系農薬の影響を調査した。その結果、花粉に残留している濃度よりも低い数ppbの濃度で、ミツバチとマルハナバチのニコチン性アセチルコリン受容体が阻害されたとしている。この結果について研究グループは、「ピコモル(pM)のイミダクロプリド、チアクロプリド、クロチアニジンに敏感であることを示し、ネオニコチノイドの継続使用には注意が必要である」と警告している。
・PNAS, 2020-7-1 ・近畿大学, 2020-07-03環境省は先月、農薬登録にかかる影響評価に日本ミツバチやマルハナバチなどの野生ハナバチ類を加えることを決めたばかりである。今回の研究により、花粉や花蜜に残留するネオニコチノイド系農薬の濃度でハナバチ類に影響を与えていることが明らかになったという。研究グループが「継続使用には注意が必要」と警告していることを重視して、ネオニコチノイド系農薬系の規制を急ぐべきだ。
EUはすでに、イミダクロプリドとチアメトキサム、クロチアニジンの屋外使用を禁止し、チアクロプリドは今年4月に農薬登録が失効している。カナダも使用規制強化に踏み込んでいる。ニュージーランド環境保護庁は今年1月、イミダクロプリドなど5種類のネオニコについて、承認を見直す根拠があり再評価すると発表している。
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