

農民連食品分析センターは7月15日、大量死したニホンミツバチからネオニコチノイド系のクロチアニジンなどの農薬の痕跡を検出したと結果を公開したこれは同センターにミツバチの大量死の相談があったのを受けたもの。同センターでは、「少なくともハチが農薬の暴露を受けていたこと示す結果ではある」として、養蜂家にとって「注意が必要な実態があることがうかがえる結果」だとしている。併せて、これまでに検査したハチミツ11検体の一部から、微量のアセタミプリドなどが検出された残留農薬検査結果を公開した。
大量死したニホンミツバチ2検体からは、殺虫剤のノバルロンとクロチアニジン(ネオニコチノイド系)、水田除草剤のベンタゾンが、いずれも検出濃度は低く痕跡レベルだったという。
同時に公開された、2017年から今年にかけてのハチミツの検査では、11検体中2検体からそれぞれ、殺虫剤のアセタミプリド(ネオニコチノイド系、0.014ppm)とフロニカミド(0.01ppm)を検出。残り4検体からは、アセタミプリド、ジノテフラン、チアメトキサム、フィプロニルなどの農薬の痕跡を検出したとしている。これらの残留農薬レベルは残留基準値を超えるものはなく、ハチミツの摂取量を考えると健康に影響が出ると判断できる数値を超えるものはないと考えられるとしている。
ハチミツのネオニコ系農薬の残留基準値は、アセタミプリドの0.2ppmを除き、他の農薬については一律基準の0.01ppmが適用される。
・農民連食品分析センター, 2020-7-15ハチミツの残留農薬に関しては、2017年に千葉工業大学の研究グループの調査により、全国各地9都県のミツバチ、さなぎ、ハチミツ73サンプルの残留ネオニコチノイド系農薬を知らべた結果、すべてのサンプルから残留農薬を検出したという。ハチミツ28製品からは最大351ppm、平均25ppmの残留農薬を検出したという。
・日経, 2017-8-28この千葉工業大学の発表に対して、日本養蜂協会は測定方法が異なるとクレームをつけている。養蜂協会は2018年4月、『蜂蜜中の残留農薬に関する報道について』という文書を公表し、食品衛生法に則った試験法でモニタリングをしているが高い数値のハチミツは見つかっていないとしている。しかし、養蜂協会は検査結果を公開せず、実態は不明のままだ。養蜂協会が「見つかっていない」というのであれば、詳しいデータを公開しない限り説得力はなく、ある程度の農薬汚染はあると解されても仕方がないだろう。
・日本養蜂協会, 2018-4ハチミツの農薬汚染は世界的に広がっており、スイスのヌーシャテル大学などの研究グループは2017年、世界各地のハチミツの75%が少なくとも1種類のネオニコチノイド系農薬を含んでいるとの研究結果をサイエンス誌に発表している。
研究グループが公開しているデータによれば、日本のサンプルは静岡県浜松市、大分県国東市、岡山県玉野市の3地点。3地点ともミカンなどの果樹栽培地域だが、サンプルのハチミツが移動養蜂によるものかは不明である。サンプルからは、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリドがいずれからも検出されている。玉野市産からは、チアクロプリドとチアメトキサムも検出されている。
アセタミプリドの濃度についてみると、国東市と玉野市のサンプルの濃度は、ハチミツ1グラム当り10ナノグラム(0.01ppm)を超えている。中でも国東市のサンプルのアセタミプリドの残留値は、残留基準値0.2ppmを超えている。
・Science, 2017-10-6【関連記事】
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