グリホサートのもたらす生殖に対する悪影響に関する研究結果が立て続けに発表された。一つは、豚を使った研究でオスの生殖細胞に悪影響を与えるというものであり、もう一つは妊娠中にグリホサートに暴露したラットから生まれたメスのラットでは着床失敗が増加するというもの。食品安全委員会はグリホサートについて、その影響は「発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」と結論付けているが、こうした新たな研究結果を盛り込んだ再評価はもちろん、予防原則による規制強化が必要だ。
グリホサートはオスの生殖細胞に悪影響
スぺインとイタリアの研究グループは7月3日、豚をモデルにした、ラウンドアップとグリホサートの哺乳類の精子に及ぼす影響に関する研究の結果、グリホサートだけとグリホサートが主成分のラウンドアップが、オスの生殖細胞に悪影響を与え、ラウンドアップの方がより毒性が強いと専門誌に発表した。
研究グループは、豚をモデルとして使い、純粋なグリホサートと、グリホサートを主成分とするラウンドアップについて、哺乳類の精子機能と生存率への影響を調べた。その結果、360μg/mLのグリホサートでは、精子の運動性、生存率、ミトコンドリア活性、アクロソームの完全性を有意に低下させたが、低用量では有害な影響はなかった。その一方で、ラウンドアップではグリホサート相当濃度≧5μg/mLでは精子の運動性を、同相当濃度≧25μg/mLではミトコンドリア活性を、同相当濃度≧100μg/mLでは精子の生存率およびアクロソーム完全性を、培養1時間後の時点で有意に低下させたという。グリホサートとラウンドアップは精子のDNAの完全性に有害な影響を与えなかったという。これらの結果から、グリホサートとラウンドアップの両方がオスの生殖細胞に悪影響を与える一方で、ラウンドアップはその主成分であるグリホサートよりも毒性が強いことが示された、と結論付けている。
・Scientific Reports, 2020-7-3これまでにも、補助剤の影響についての研究は発表されている。フランス・カーン大学の研究グループは2017年12月、グリホサートを主成分とする除草剤14製剤を分析し、主成分のグリホサートより補助成分がより有毒であり、ヒ素などの重金属を含んでいると発表している。実験では、トマトの苗にグリホサートと補助剤を含むグリホサート製剤を散布。
120時間後、グリホサートに比べ、補助剤を含むグリホサート製剤の方が枯れ方がひどい写真を公開している。
こうした研究結果は、農薬登録に際し、活性成分だけの審査ではなく、補助剤を含んだ製剤での審査が必要なことを示している。フランスなどは、一部の強毒性の補助剤を禁止している。
・Toxicology Reports, 2017-12-30妊娠中のグリホサート暴露が次世代に影響の可能性
アルゼンチンの研究グループは7月5日、グリホサートを与えられた妊娠中のラットから生まれた次の世代の子に影響が出るとの研究結果を専門誌に発表した。グリホサートとグリホサート系製剤が着床異常に関連している可能性があるとしている。
研究グループは、妊娠中のラットにグリホサート系製剤とグリホサートを妊娠日9日から離乳までの間、経口投与した。その親から生まれたメスのラットでは、着床失敗が増加。子宮着床に関連する遺伝子が破壊されていたという。この影響は、グリホサートだけの場合とグリホサートを主成分とする製剤のどちらも起きているとしている。
・Food and Chemical Toxicology, 2020-7-5【関連記事】
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