最終更新日:2020年8月21日
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■米国 遺伝子組み換え蚊の放出承認 住民投票は拒否
simaka.jpg / Flickr
ヒトから吸血するネッタイシマカ / Sanofi Pasteur / Frank Hadley Collins / Flickr

 米国環境保護庁(EPA)が承認した遺伝子組み換え蚊の放出について、地元のフロリダ・キーズ蚊管理区(FKMCD)は8月18日、地域住民の2千通の反対意見や住民投票の実施を求める声を拒絶し、21年からフロリダ州モンロー郡で合計7億5千万匹の遺伝子組み換え蚊の放出を認めた。この放出に反対してきた環境団体は、コロナウイルス禍と気候危機に直面しているときに、無駄な出費とし、米国環境保護庁がさらなるリスク分析を拒み、さらなるリスク分析不能と指摘して、放出承認を非難する声明を出した。

 米国環境保護庁は今年5月、オキシテックの遺伝子組み換え蚊の試験放出について、生物農薬の試験的使用として認めると発表した。計画では、米国フロリダ州とテキサス州の2か所で、地元自治体の承認ののち2年間にわたり実施されるとしていた。放出される遺伝子組み換え蚊は、試験地1エーカー(約4千平方メートル)当たり、週に2万匹で、最大6600エーカーまでの試験が承認された。今回の地元の承認にあたりオキシテックの提出した計画書では、放出地点は明らかにされていないという。

 地域住民は、この遺伝子組み換え蚊が安全で効果的であることを示すデータがないことやなどを指摘し、現地試験の申請を却下するように求めたという。また、この遺伝子組み換え蚊の放出は、フロリダ・キーズの敏感な生態系に大きな脅威をもたらす可能性があると、専門家の公開パネルで強調されたという。

 食品安全センター(Center for Food Safety)などの声明で、地元のフロリダ・キーズ環境連合のバリー・レイさんは、「フロリダ・キーズ蚊管理区(FKMCD)は、私たちのコミュニティに義務があり、危険で信頼できない製品の販売人ではありませんが、公衆と環境の健康と私たちの地域経済にダメージを与える可能性のある実験を進めたいと考えています。私たちは、コミュニティと生態系に利益をもたらす真の解決策を必要としています」と述べている。

 Friend Of The Earthのダナ・ペルズさん(食品・技術プログラムマネージャー)は、「遺伝子操作された蚊の放出は、パンデミックの真っ只中にあるフロリダの人々、環境、絶滅危惧種を不必要に危険にさらすことになります。この承認はオキシテックの利益を最大化するためのものであって、蚊が媒介する病気に対処するための緊急の必要性のためのものではありません」と指摘している。

 ・Center for Food Safety, 2020-8-19  ・EPA, 2020-5-1  ・Friend Of The Earth, 2020-7  ・Oxitec, 2020-8-19

 この放出される遺伝子組み換え蚊は、オキシテック社の遺伝子操作した不妊化のネッタイシマカを放出して、蚊の個体数を減らそうというもの。フロリダ・キーズでは2016年にも遺伝子組み換え蚊の放出計画があり、この時は大統領選に合わせて住民投票が実施され、反対多数で放出されていない。

 オキシテックはこれまでに、同社の開発した遺伝子組み換えの放出をケイマン諸島、マレーシア、ブラジルなど世界各地で実施してきた。昨年、ブラジルでの放出に関し、興味深い研究結果が発表され、ネッタイシマ蚊の撲滅を狙ったオキシテックの遺伝子組み換え蚊の失敗が明らかになっている。米国・イェール大学などの研究グループは19年9月、ブラジル・ジャコビナで放出された遺伝子組み換えのネッタイシマ蚊の遺伝子が、予想に反して野生種に組み込まれていることを確認したと専門誌に発表。当初激減とされた蚊の個体数は18か月で回復したという。また、放出された遺伝子組み換え蚊と交雑した野生種は、より強力な蚊になっていたという。

 ・Scientific Reports, 2019-9-10  ・Yale University, 2019-9-10
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