日本消費者連盟と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは8月25日、富山県産の大豆と大豆加工品からグリホサートが検出されたとして、全国農業協同組合連合会富山県本部(JA全農とやま)に対してグリホサート使用中止の指導などを求める公開質問状を提出した。
今回判明した富山県産大豆と大豆加工品の残留グリホサートは、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの会員が、自主的に検査機関に依頼した検査で判明したという。これを受けて、キャンペーンと日本消費者連盟(日消連)は、収穫前のグリホサート散布に関しJA全農とやまに次の4項目の質問状を提出し、9月8日までに回答するよう求めた。
- グリホサートの推奨あるいは許容の有無
- 収穫前散布実態の把握
- 国際がん研究機関の発がん性評価や米国での損害賠償裁判勝訴を知っているか
- グリホサート散布中止の指導要請
大豆は、大豆そのものだけでなく、豆腐や納豆、油揚げ、湯葉、味噌、醤油などの日本の食には欠かせない大豆製品の原料でもあり、JA全農とやまの回答が注目される。
・日本消費者連盟, 2020-8-25大豆に対するグリホサートの残留基準値は、日本では20ppmと高く設定されている。また、農薬登録されているグリホサート剤は115種類あるが、そのうち大豆には28種類が使用できる。多くは、播種前や雑草生育期に限定されているが、ラウンドアップマックスロード(日産化学)は、「落葉終期〜収穫14日前まで」の使用が認められている。
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは今年2月、北海道産大豆の除草剤グリホサートを調査しホクレンの製品からグリホサート0.05ppmを検出と発表した。グリホサートが検出されたのは、検査した7種類の北海道産大豆のうち、ホクレンの製品だけだった。ホクレンは、使用が認められている「落葉終期〜収穫14日前まで」の期間、グリホサート使用を推奨していたともいわれている。
これを受けて、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンと日消連は今年3月、大豆に対する収穫前のグリホサート使用中止を求める公開質問状をホクレンに送った。ホクレンの慇懃無礼な回答に再質問状を送った結果、ホクレンは「JAグループ北海道では、グリホサート剤の「落葉終期〜14日前」での使用は、品質低下ならびに適用外となるケースもあることから使用を控えることとし、令和2年産以降、上記登録内容で使用した場合、JAの大豆共計では取り扱わないこととする」と決定したと回答している。少なくとも、ホクレン関連の大豆で、収穫前のグリホサート散布は行われないようになったことは歓迎したい。
・遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン, 2020-2-20 ・遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン, 2020-3-17 ・遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン, 2020-4-15 ・遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン, 2020-5-8国際がん研究機関がグリホサートに「おそらく発がん性がある」と評価して以来、世界各国の規制機関は一致して、その評価を否定してきた。しかし、米国のラウンドアップ損害賠償裁判では、判決の出た3件では発がん性を認め高額の損害賠償を命ずる判決が下されている。
消費者団体などの自主的な検査で、これまでに残留グリホサートが明らかになっているのはホクレンと、今回の富山県産の2つだけであるが、ホクレンのようにJA組織が推奨していた場合、この2道県産にとどまらない可能性がある。世界的なグリホサートに関する動きを考えるならば、いくら農薬登録で使用が認められているとはいえ、より安全な農産物の生産に向けて、JA全農をはじめ農協は、組織をあげてグリホサートの使用中止を検討すべき時期に来ているといえるのではないか。JA全農とやまが、ホクレンが決定したように、少なくとも、グリホサートが残留しやすい収穫前散布の中止を農家に呼びかけることを期待したい。カナダの穀物取り扱い大手2社はこれまでに、収穫前にグリホサートを使用した大麦の取り扱い中止を生産農家に通知している。このように、世界的に脱グリホサートは少しずつ進んでいる。
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