サナテックシードは8月17日、同社のゲノム編集によって作出した高GABAトマトは米国農務省が規制対象の遺伝子組み換え作物に該当しないことを確認したと発表した。このゲノム編集高GABAトマトは、江面浩・筑波大学教授らのグループが開発したもので、サナテックシードが実用化に向けて開発を続けていたもの。米国農務省は、企業などからの非規制該当確認の問い合わせについて、依頼書と確認書をウェブサイトで公開している。
この米国農務省のお墨付きをもって、規制対象のゲノム編集作物には当たらないとして、サナテックシードのゲノム編集高GABAトマトが市場に登場する可能性が高い。サナテックシードは、2021年に、このゲノム編集高GABAトマトの種子の試験販売を開始し、世界初のゲノム編集による高ギャバトマトが21年の年末に店頭に並ぶことを目指しているとしている。
サナテックシードのゲノム編集高GABAトマトは、通常の4〜5倍のGABA(ギャバ:γ-アミノ酪酸)を含有するように遺伝子操作したトマト。GABA自体は動物や植物に含まれる天然アミノ酸の一つで、ストレスや興奮を抑える作用があるという。
ゲノム編集による遺伝子操作では、目的外の遺伝子にまで改変してしまうオフターゲットが問題になっているが、このゲノム編集高GABAトマトについて、サナテックシードも米国農務省の確認書もオフターゲット問題ははっきりしていない。
・サナテックシード, 2020-8-17 ・サナテックシード, 2020-5-19 ・USDA, 2020-8-12 ・エコノミスト Online, 2019-1-15日本政府は昨年、ゲノム編集技術を使い、遺伝子を人為的に切断したのち自然修復での変異を期待するSDN−1に該当するゲノム編集食品について遺伝子組み換え食品には当たらないとして、その安全性の審査や表示は不要とした。併せて、メーカーに対して厚労省への相談と届出を求めている。この相談や届出に罰則はなく義務でもない。メーカー性善説に立っているに過ぎない。昨年10月に解禁し、11か月経過した8月29日現在、厚労省のゲノム編集食品に関するウェブサイトには、公開するとした相談や届出の情報は、ただの1件も掲載されていない。今回のサナテックシードのゲノム編集高GABAトマトも情報公開されるかが注目される。
・厚労省このゲノム編集高GABAトマトを開発した江面教授らの研究グループは、このほかにもゲノム編集により高ミラクリン発現トマトを開発している。この高ミラクリン発現トマトは、2017年12月に食品安全委員会で安全性評価が始まったが、18年12月に開催の食品安全委員会・遺伝子組換え食品等専門調査会以降、審査が止まっている。議事録によれば、この高ミラクリン発現トマトは閉鎖温室で栽培し、単体ではなく加工品として販売を予定しているという。
サナテックシードは、パイオニアエコサイエンス社がゲノム編集作物開発と実用化に特化して、18年4月に設立した企業で、江面浩・筑波大学教授が取締役最高技術責任者に就任している。パイオニアエコサイエンスは、1999年にパイオニアオーバーシーズコーポレイション(米国)とジョイブラザーズ株式会社(日本)との合弁により設立され、パイオニアハイブレッドジャパンの園芸種子などが移管されている。その後、2016年に、日本側がデュポン・パイオニアの持ち株を買収し、パイオニアエコサイエンスと合併して新たにパイオニアエコサイエンスを設立したという。
・サナテックシード ・パイオニアエコサイエンス ・筑波大学高級マスクメロンもゲノム編集?
江面教授らの研究グループは先ごろ、マスクメロンの全ゲノム情報を解読したと発表している。発表によれば、高級マスクメロンの標準品種「アールスフェボリット春系3号」の全ゲノム情報を解読し、専門誌(Communications Biology)に発表した。研究グループは、遺伝子情報をデータベース化して公開し、「高級マスクメロンの品種改良に役立てられることが期待されます」としている。
筑波大学の発表では、このマスクメロンの全ゲノムの解読に対して「ゲノム編集技術によって作出された個体の、客観的かつ確実な安全性評価が可能になると考えられます」とコメントしており、ゲノム編集を視野に入れていると思われる。今後ゲノム編集メロンが市場に出てくる可能性もある。
・筑波大学, 2020-8-19 ・筑波大学, 2020-8-19 ・Communications Biology, 2020-8-13 ・共同, 2020-8-29【関連記事】
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