最終更新日:2020年8月30日
2020年
 07年 08年 09年 10年 11年
 12年 13年 14年 15年 16年
 17年 18年 19年 20年 21年
 22年 23年 24年
2020年8月
1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031
最近の記事
2022.12.29 No.1152
2022.12.25 No.1151
2022.11.30 No.1150
2020年8月の記事
2020.08.31 No.1063
2020.08.30 No.1061
2020.08.29 No.1060
2020.08.26 No.1059
2020.08.24 No.1058
2020.08.22 No.1057
2020.08.21 No.1056
2020.08.20 No.1055
2020.08.14 No.1054
2020.08.10 No.1053
2020.08.07 No.1052
2020.08.06 No.1051
2020.08.03 No.1050
2020年7月の記事
2020.07.30 No.1048
2020.07.29 No.1047
2020.07.16 No.1046
2020.07.13 No.1045
2020年8月

2020.08.30 No.1061
■米国 66団体がホームセンター大手にグリホサート販売中止の要請書
roundup-4.jpg / Flickr
店頭のラウンドアップ(米国) / Mike Mozart / Flickr

 米国の環境、農業、人権など66団体(会員数750万人)は8月26日、米国のホームセンター大手のホームデポとロウズに対して、店舗と通販でのグリホサートの販売を全面的に中止するよう求める要請書を送った。要請書はグリホサートともに、2,4−Dやジカンバなどの有害農薬の段階的販売中止と代替有機認証製品などの販売拡大の努力も求めている。ホームデポ、ロウズはこれまでに、ネオニコ製品の販売を中止しているが、米国のコストコは昨年、グリホサートの取り扱いも中止している。

 要請書は、ヒトの健康や環境に対するグリホサートの有害性を指摘し、次の4項目を実現するように求めている。そして、「グリホサート製品に関連するヒトの健康や受粉媒介生物(ポリネーター)、環境への広範な有害性を考慮すると、それらを店頭から撤去することが責任ある決定である」と結んでいる。

  • グリホサートを含むすべての製品を店頭およびオンライン販売から排除するための期限付きの取り組みの確立
  • 有機認証製品およびその他のより安全な代替製品の提供の拡大
  • グリホサートの販売を廃止しても、毒性が同等以上の製品(例えば、2, 4-D、ジカンバ、アトラジンなどの製剤)の販売が増加しないようにするため、販売されているすべての農薬製品の有害性を調査・評価し、有害性農薬製品の売上全体を減少させる目標の設定
  • 受粉媒介生物とヒトの健康を保護するための措置を講じ、今後も継続することを示すため、これらのコミットメントに向けた進展の公表

 要請書は、両社がこれまでに、ネオニコチノイド系農薬と関連製品、ネオニコを使用した花木などの取り扱いを中止したことを称賛しているが、代替製品にも適切に対処するように求めている。その上で、新たなネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルやフルピラジフロンをはじめとする、受粉媒介生物(ポリネーター)に懸念のある農薬にも同じように対処することを求めている。

 フレンズ・オブ・アース(Friends of the Earth)のプレスリリースは、要請書を送った団体の担当者の声をいくつか紹介している。

 食品安全センター(Center for Food Safety)の西岸地区責任者のレベッカ・スペクターさんは、「政府による適切な保護がない場合、小売業者は、ヒトの健康や、オオカバマダラなどのポリネーターを含む環境に悪影響を及ぼすことが知られているグリホサートを含む製品の販売を中止し、責任ある行動を取るべきです」と、ホームデポのような小売業者の役割の重さを指摘している。

 フレンズ・オブ・アースのケンドラ・クラインさんは、「家庭や園芸店では、この有害な製品の使用を減らす上で大きな影響があります。調査によると、住宅所有者は、農家が作物に使う化学農薬よりも、1エーカー(約4千平米)あたり最大10倍も多く農薬を芝生に使っています」という。そして、「より安全な有機の代替製品があるのに、がんに関連した製品を消費者に売るのは無謀です。ホームデポとロウズは、グリホサートに断固とした措置を取ることで、有害なネオニコチノイド系農薬を段階的に廃止したこれまでの約束を強化すべきです」という。

 大学構内でのグリホサート使用に反対する運動を展開している、除草剤フリー・キャンパスのマッケンジー・フェルドマンさんは、「規制当局は私たちを守ることができませんでした。若者は、自分たちの健康を自分たちの手に委ね、ホームデポとロウズの店頭からグリホサート系除草剤を取り除くよう要求しています。これらの製品が私たちの体や環境に及ぼす悪影響について十分な科学的証拠があります。ホームデポとロウズには、今でもこれらの製品を使用して、そのリスクを認識していない多くの人々を守る責任があります」という。

 ・Friends of the Earth, 2020-8-26

 今回の要請ではグリホサートの取り扱い中止が前面に出ているが、それ以外の2,4−Dやジカンバなどの有害な除草剤や、生態系への有害性が明らかになってきているスルホキサフロルのような新しいネオニコチノイド系農薬にも対処=取り扱いの中止を求めている。2015年ごろ、米国の市民運動は今回のようにいろいろな団体が共同してのキャンペーンを展開し、その結果、ホームデポやロウズなどの大手ホームセンターは、ネオニコチノイド系農薬についてその取扱いを段階的に中止した。昨年には、米国小売大手の一角コストコがグリホサート製品の取り扱いを中止している。

 フレンズ・オブ・アース(Friends of the Earth)のケンドラ・クラインさんが指摘しているように、グリホサートに限らず家庭や園芸用で使用されている農薬は、間違いなく、それを使う人の健康や周辺の環境に影響を与えている。そうした農業用以外での使用を中止させるには、やはりホームセンターなど小売りでの販売中止が大きな意味を持つ。日本でも、市民の署名で100円ショップのダイソーがグリホサート剤の販売を中止したが、ホームセンターやドラッグストアで販売されている除草剤やネオニコ系農薬を使った製品の規制が課題であることも間違いない。しかし、日本の場合、農薬としての出荷量のデータはあるものの、農薬外の家庭用などで使用される量がどの程度あるのか全く分からないのが実情で、その影響も明らかではない。

 米国のように、関係する団体が共同して企業や政府などに要求し、要請する行動はもっとやられてもよい。

【関連記事】
カテゴリー
よく読まれている記事