農民連食品分析センターは9月8日、市販のリンゴの残留農薬分析結果を公開した。分析したリンゴは2017年産の4検体で、産地は長野県が3検体、山形県が1検体。延べ12種類の残留農薬が検出され、そのうち4種類がネオニコチノイド系だったという。中でもアセタミプリドはどのリンゴからも検出されたという。
ネオニコチノイド系は浸透性のため、果実の中身にまで浸透し、洗っても落ちることはない。同センターは、ネオニコ系の中でも4検体全てから検出されたアセタミプリドに注目し、皮と果肉にどのように残留しているかを検討している。その結果、濃度としては皮の方が高く出たものの、皮に残留するアセタミプリドはリンゴ全体の2割前後(13%〜27%)であり、8割前後が果肉に残留していることが分かったという。結局、皮をむいても摂取するアセタミプリドの量は大きく減ることにはならない。
含有量 [μg] | 割 合 | |||
---|---|---|---|---|
皮 | 果肉 | 皮 | 果肉 | |
りんごA | 0.07 | 0.18 | 27% | 73% |
りんごB | 0.82 | 3.68 | 18% | 82% |
りんごC | 0.09 | 0.58 | 13% | 87% |
りんごD | 1.33 | 3.72 | 26% | 74% |
平 均 | 0.58 | 2.04 | 21% | 79% |
リンゴのアセタミプリドの残留基準値は2ppmだが、今回公表された検査結果の最高値は、果肉、皮ともにりんごBで、それぞれ0.022ppmと0.052ppmだったという。
東京都健康安全研究センターは毎年、国産の野菜と果実の残留農薬について実態調査を年俸の形で公表している。この報告でも、リンゴの果肉からネオニコ系を含む浸透性の農薬が検出されているという。2014年度の検査結果では検査した内3個のりんごの果肉からアセタミプリドとチアクロプリドが検出されている。ほかにも、日本ナシやカキ、ミカンなどの果肉からネオニコ系農薬が検出されたと報告している。東京都健康安全研究センターは、国内産、輸入ともに、ネオニコ系の検出頻度が上がってきていると指摘している。
東京都健康安全研究センターはまた、ネオニコチノイド系農薬検出の理由として、《ネオニコチノイド系農薬は浸透移行性が高く、液剤や水和剤の他、粒剤や粉剤等として、土壌混和または株元散布の形で使用される。したがって根から吸収され、果実全体へ移行したものと考えられた》と指摘している。
・農民連食品分析センター, 2020-9-8 ・東京都健康安全研究センター, 2016-3ネオニコチノイド系農薬の一つのアセタミプリドは、日本曹達が開発し、モスピランなどの商品名で販売されている。日本での出荷量は50.2トンとネオニコチノイド系農薬のなかでは4番目に位置している。果実類に対しては、リンゴのほかナシやモモには収穫前日までの散布が認められている。
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