最終更新日:2020年9月13日
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2020.09.13 No.1069
■コロンビア:グリホサート空中散布再開の動き
 NGOは反対声明 地域リーダー暗殺
coca_colombia-2.jpg / Flickr
コロンビアで栽培されるコカ(2007年) / Laurie Ray / Flickr

 南米のコロンビア政府は過去、コカインを資金源としていた麻薬組織と反政府左翼ゲリラのコロンビア革命軍(FARC)に対して、資金源遮断を意図して除草剤グリホサートの空中散布=「枯葉作戦」で原料のコカを撲滅しようとしてきた。2015年になり、当時のフアン・マヌエル・サントス大統領は空中散布を停止した。しかし、現在のイヴァン・ドゥケ大統領は、トランプ米国大統領の要求を受けて、空中散布再開に向けて動いているという。

生殖に関する権利を侵害とNGOが反対声明

 コロンビアの性と生殖の権利センターとバジェ大学は9月3日、人権たる生殖に関する権利を侵害するとして、コロンビア政府はグリホサート空中散布を再開すべきではないとする声明を発表した。

 同センターとバジュ大学は今年4月、グリホサートへの曝露が人々の生と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)に及ぼす悪影響、生殖能力への有害な影響、流産の原因、妊娠中の胎児の将来の身体的影響や認知的障害の可能性などを明らかにした調査報告書(スペイン語版)を発表している。報告書は「グリホサートによるリプロダクティブ・ヘルスへの悪影響を示す明確な証拠」がある警告しているという。

 同センターの地域ディレクターのカタリナ・マルティネス・コラルさんは、「女性がライフプランの一環として子供を持つことを選択した場合、国家の行動は、女性の身体的または精神的健康を害する可能性のあるリスクを彼女に負わせるべきではありません。生殖に関する権利は人権であり、女性が自分の体の自律性を保証されたときに現実のものとなり、それが平等に向けて前進する唯一の方法です」と述べているという。

 同センターとバジュ大学は、コロンビア政府に対して、生殖に関する権利を尊重し、保護し、保障する国際的かつ憲法上の義務を負っていて、その領土内のすべての人々の生命、健康、完全性と生殖の自主性に影響を及ぼすいかなる危害も引き起こさないようにしなければならない、としている。

 ・Center for Reproductive Rights, 2020-9-3  ・CNN,2020-8-28

空散再開は農民の自立を妨げる

 コロンビア北西部に位置するアンティオキア県で2018年までコカを栽培していた農家のへルナンデスさんは、2003年と2004年にグリホサートの空中散布を受け、健康被害は今も続いていると証言しているという。

 飛行機から散布された除草剤は、霧のように畑に降ってきて、仕事をしていた農民の皮膚に炎症を引き起こし、出血するほどだったという。病院から遠いところで、農民たちは皮軟膏で傷を癒そうとし他という。ヘルナンデスさんは、腕と脚に白い斑点があり、軟膏を塗っているという。

 2015年のコロンビア革命軍との和平以降、代替作物プログラムによって、コカに代わるコーヒーやカカオが栽培されてきていたという。ヘルナンデスさんによれば、空中散布はコカばかりでなく、農民が栽培している作物も枯らし、生計の道を断つことになり、多くの農民が再びコカ栽培に戻るだろうという。コカインの専門家でのトビー・ミューズさんも、空中散布によるコカの破壊は効果的ではないという。「解決策は、常にコカ農家と協力して、コカ栽培に代わる作物を生産すること」だという。

 ・CNN,2020-8-28
cacao_colombia.jpg / Flickr
コカに代わるカカオを収穫するコロンビアの農民 / USAID / Flickr

グリホサート空散再開反対の地域リーダー暗殺

 こうしたグリホサートの空中散布再開の動きの中、コロンビア北西部で空中散布に反対していた地域リーダーの一人が、8月11日に暗殺されたという。

 コロンビア北西部に位置し、コロンビアでも最も貧しい県の一つといわれるチョコ県で暗殺されたパトロンさんは、「アグロ・エコノミーとコミュニティ生産のためのキンチャス」という団体の創設者の一人だったという。キンチャスは、グリホサートの空中散布に反対し、コカ栽培の代わりにアグロ・エコロジーで自立を図っていたという。右翼準軍事組織が殺害を示唆しているという。

 ・Sustainable Pulse, 2020-9-3
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