9月21日は、国際単一樹種植林反対の日(International Day of Struggle Against Monoculture Tree Plantations)だった。グローバル・ジャスティス・エコロジー・プロジェクトは、目下の焦点は米国農務省が規制を外そうとしている、耐病性の遺伝子組み換えアメリカグリの木だという。ストップ・遺伝子組み換え樹木キャンペーンは、この遺伝子組み換えアメリカグリの木を「トロイの木馬」であり、規制撤廃でユーカリなどの紙パルプ用の遺伝子組み換え樹木の解禁につながると警告している。この遺伝子組み換えアメリカグリの規制撤廃反対の署名運動が立ち上がっている。
米国農務省動植物検疫局(APHIS)は8月18日、ニューヨーク州立大学申請の遺伝子組み換えによるクリ胴割れ病に耐性のあるアメリカグリの栽培規制緩和に向けて意見公募を始めた。この遺伝子組み換えアメリカグリは、米国ニューヨーク州立大学のアメリカグリ研究・回復プロジェクトが開発していたが、2014年11月に公式発表している。クリ胴枯病で絶滅の危機にあるアメリカグリに遺伝子組み換えで耐性を持たせようとしているという。発表時、屋外での植え付けの承認取得に5年ほどかかるとしていた。
遺伝子組み換えアメリグリは、クリの木の形成層に侵入した病原菌が作り出すシュウ酸に耐性を持つように小麦の耐シュウ酸遺伝子を組み込み、シュウ酸による形成層の枯死を防ぐというもの。もっとも、小麦の遺伝子を組み込んでいるものの、グルテンを作る能力はないという。
・USDA APHIS, 2020-8-18この遺伝子組み換えアメリカグリを、何の管理もせず植え付けることは「(生態系に)何十年、何世紀にもわたって予測できない結果をもたらす大規模で不可逆的な実験を解き放つもの」として、米国農務省に中止を求める署名運動が立ち上がっている。
ストップ・遺伝子組み換え樹木キャンペーン(STOP GE Trees)などの呼び掛けは、米国市民はこれまで、遺伝子組み換えされた樹木に反対してきたが、木材産業とバイオテクノロジー産業は、遺伝子組み換えのアメリカグリを「テスト・ツリー」として実現することで突破口を開こうとしているという。もし認可されるなら、生態系で拡散するように「設計」された、史上初の遺伝子組み換え樹木となり、他の遺伝子組み換え樹木への門戸が開かれることになると指摘している。
米国農省宛の中止を求める要請文には、この制御されていない「実験」は、まだ生き残っている野生のアメリカグリを永遠に絶滅させる暴挙とも指摘している。また、クリ農家、特に有機のクリ農家は、この遺伝子組み換えアメリカグリの花粉による遺伝子汚染が生じた場合には、生計の道を失う可能性があるとも指摘している。
この遺伝子組み換え樹木の植林が始まれば、遺伝子組み換えアメリカグリに侵入を望まない、先住民の権利を侵そうとしているとしている。
この遺伝子組み換えアメリカグリが屋外で栽培された場合、指摘されているように、自然環境で生き残ったアメリカグリへの遺伝子汚染が引き起こされ、生き残っていた数少ない本来のアメリカグリの絶滅する可能性がある。絶滅の危機にあるアメリカグリを回復させようとして始まった、遺伝子組み換えによる「回復プロジェクト」が、本来の種にとっては「絶滅プロジェクト」になる可能性があるという、全く反対の結果をもたらすことになる。
ストップ・遺伝子組み換え樹木キャンペーンは、規制撤廃が他の遺伝子組み換え樹木の解禁につながると指摘してる。日本でも遺伝子組み換え樹木の隔離圃場栽培が実施されている。林木育種センターは2007年から5年の計画で、パルプ原料としてセルロースを増加させた遺伝子組み換えギンドロを、茨城県日立市の同センターの隔離圃場で栽培した。筑波大学でもGM耐冷性ユーカリの試験栽培を実施している。
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