グリーンピースなどは9月7日、サイバスがゲノム編集で育種したというスルホニルウレア系の除草剤に耐性のあるナタネ(SUナタネ)について、その遺伝子変異を確認したと発表した。このSUナタネについてサイバスの関係者は、化学物質による突然変異であってゲノム編集ではないと言い出しているという。9月15日、背景情報とともに経緯がグリーンピースのサイトに掲載された。
・Greenpeace, 2020-9-15これまで、商業栽培にこぎつけたゲノム編集作物は、このサイバスの除草剤耐性ナタネと、カリクストの高オレイン酸大豆だといわれていた。各国の規制機関は押しなべて、特定の遺伝子の機能をノックアウトした外来遺伝子を含まないゲノム編集は「従来育種と変わらず検出できない」とされてきている。そうした中、米国の健康研究所(Health Research Institute、米国アイオワ州)などの研究グループは9月7日、従来からある装置と技術を使ってサイバスのゲノム編集ナタネの遺伝子の検出に成功したと発表していた。
・Foods, 2020-9-7 ・Greenpeace, 2020-9-7この研究は、発表当初、ゲノム編集で遺伝子操作が行われたことを検出したとも解された。ドイツの民間検査機関のテストバイオテックは9月11日、サイバスのゲノム編集ナタネに関し、健康研究所などの研究グループが発表した研究結果は、除草剤耐性にかかわる遺伝子の改変部分が検出されたに過ぎず、ゲノム編集で遺伝子操作がなされたことを証明したわけではない、と指摘するコメントを発表した。テストバイオテックはまた、今回のサイバスのゲノム編集ナタネに関しては公開情報が不足しているとも指摘している。
・Testbiotech, 2020-9-11サイバスのゲノム編集ナタネは、スルホニルウレア系の除草剤に耐性があることを特徴としている。ドイツのBASFもスルホニルウレア系除草剤耐性ナタネを開発しているが、こちらは化学物質を使った「ランダム突然変異誘発」により開発したとしている。
テストバイオテックによれば、一部に、サイバスは本当にゲノム編集を使ったのか疑問視していたという。しかし、サイバスが除草剤耐性を目標にゲノム編集による遺伝子操作を行っていたことは確かなようだ。サイバスは14年11月、スルホニル尿素形除草剤耐性ナタネの発売開始を発表してたが、「ゲノム編集」とはせず「非遺伝子組み換え」としている。
・Cibus, 2014-11-19遺伝子組み換え関連の業界団体である国際アグリ事業団(ISAAA:International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications)のGM承認データベースでは、サイバスの除草剤耐性ナタネは承認された遺伝子組み換え作物としての登録はく、遺伝子組み換えナタネとして承認されていない。
・ISAAAグリーンピースによれば、米国証券取引委員会に提出された2019年の投資家向けの予備目論見書でサイバスは、除草剤耐性ナタネ(SUナタネ)はゲノム編集されたと記載されているという。
一方、ドイツ連邦消費者保護食品安全庁(BVL)とカナダ食品検査庁(CFIA)は2013年から14、5年にかけて、この除草剤耐性ナタネ(SUナタネ)を調査し、突然変異の可能性があることが分っていたという。
・BVL, 2020-9-9この品種についてサイバスは、遺伝子組み換えでない品種に関する米国農務省の規制非該当の確認を得ていない。この問題に関し、サイバスは公式にコメントしていないようだ。少なくとも、現時点ではサイバスのサイトには掲載されていない。
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