最終更新日:2020年10月13日
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2020.10.13 No.1084
■フランス 10%の植物性食品に残留ネオニコ 多くは輸入食品
chinese_tea_x.jpg / Flickr
中国茶 / Guldem Ustun / Flickr

 フランスの環境NGOフューチャー・ジェネレーションズは10月2日、フランス競争・消費・詐欺防止総局(DGCCRF)の2017年度の残留農薬に関するデータを分析した結果、植物性食品の10%からネオニコチノイド系農薬が検出されたと発表した。検査された約4600のサンプルのうち491検体から何らかのネオニコチノイド系農薬を検出したとしている。いくつかからは複数のネオニコチノイド系農薬が検出されたとしている。フランスは18年9月、すべてのネオニコチノイド系農薬を禁止し、EUは同年12月にイミダクロプリドなど3種類のネオニコチノイド系農薬を禁止した。

 フューチャー・ジェネレーションズの分析によれば、残留ネオニコチノイド系農薬を検出した食品の生産国は、フランスを含む32か国で、3分の2がEU以外の国だったという。また、フランス産は検出件数の16%だったとしている。

 残留ネオニコチノイド系農薬を検出した食品の中でも、中国産のお茶が32%を占めているという。他に検出の多い食品はナシ、トウガラシ、サクランボ、アプリコットだという。検出された残留農薬のレベルは明らかではない。

 フューチャー・ジェネレーションズは、ネオニコチノイド系農薬が検出された食品の84%が輸入品であり、フランスやEUが禁止したとしても、輸入食品を通したネオニコチノイド系農薬の摂取が続くことになるとして、輸入食品の残留農薬の規制を変更すべきだとしている。

表1.検出農薬件数
農薬名 検出件数
アセタミプリド 205
クロチアニジン 18
イミダクロプリド 203
チアクロプリド 151
チアメトキサム 103
延べ件数 680
 ※Generations Futuresの公表データより作成
表2.検出食品
食 品 検出件数
157
ナシ 41
トウガラシ 36
サクランボ 38
その他 219
延べ件数 491
 ※Generations Futuresの公表データより作成
表3.生産国
生産国 検出件数 備 考
中国 157
フランス 79 ※海外県含む
ドミニカ 48
スペイン 44
チリ 26
その他 137
延べ件数 491
 ※Generations Futuresの公表データより作成
 ・Generations Futures, 2020-10-2  ・AFP, 2020-10-2  ・Pledge Times, 2020-10-2

 このレポートでは、ネオニコチノイド系農薬が検出された食品の3分の1を中国産の茶が占めている。検査された茶の母数が分からないが、かなりの高率のようにもみえる。

厚労省の公表データは国産から検出ゼロだが・・・

 日本における検疫所や地方自治体での検査結果を厚労省がまとめて公表しているが、輸出国は不明であり単純に比較できないが、2018年度の輸入の茶の残留ネオニコチノイド系農薬では、延べ検査数144件に対して残留ネオニコ系の検出は8件(検出率は5.6%)で、大きな違いがあるようにもみえる。この公表データの検出限界レベルは明記していない。

表4.茶の残留ネオニコ系農薬(2018年度)
農薬名 国 産 輸 入
検査数 検出数 検査数 検出数 範囲[ppm]
アセタミプリド 28 0 32 2 0.07 - 0.1
イミダクロプリド 8 0 28 0
クロチアニジン 8 0 10 0
ジノテフラン 0 0 14 2 0.1 - 0.3
チアクロプリド 23 0 29 0
チアメトキサム 23 0 31 4 0.2 - 0.7
ニテンピラム 0 0 0 0
延べ合計 90 0 144 8

 表4のように、厚労省のまとめでは国産茶からは検出されていないとしている。しかし、2014年にアクト・ビヨンド・トラストが公表した国産茶に関する調査では、市販の茶葉13件(静岡、三重、鹿児島、京都)を検査して9件からネオニコチノイド系農薬を検出している。また、北海道大学の研究グループは2018年、市販のペットボトル茶飲料と国産茶葉から残留ネオニコ系農薬を検出したと発表している国産茶から1件も検出されていない厚労省のデータと、アクト・ビヨンド・トラスト及び北海道大学の結果には大きな違いがあるように見える。

 ・アクト・ビヨンド・トラスト, 2014-3-1  ・Toxicology Reports, 2018-6-19

 フランスのNGOが指摘するように、国内での使用を規制したとしても、規制の緩い海外からの輸入品を通して残留農薬の摂取が続く以上、残留基準値を厳しくするよう規制強化を求めることはもっともなことだ。

緩すぎる日本の残留基準値

 一方、日本の残留基準値は海外よりも緩いケースが多いことは、農水省が公表している諸外国の残留規制値との比較表からも明らかである。農水省は米やリンゴなどの果実、茶など13品目について、日本の残留基準値をコーデックスの基準値と16の国や地域の基準値と比較したデータを表形式で公表している。その表では、日本の基準値より厳しい場合に該当するセルがピンクに塗られている。品目や農薬によっても違うが、多くの国・地域が日本よりも厳しい残留基準値を設定していることがよくわかる。

 ・農水省

 この農水省の比較は、残留基準値の緩い日本から厳しい基準の国へ輸出する際に、相手国の残留基準値を超えないような栽培を奨励しているからであって、国内向けの残留農薬を減らそうという努力でないことははっきりしている。残留規制値の見直しと低減が、国内向けの残留農薬を減らす上で大きな要因となることは間違いない。輸出向けに残留農薬の少ない栽培が、慣行栽培でも可能である以上、予防原則に立って、残留基準値をより厳しくするべきだ。

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