北海道消費者協会は10月8日、義務のない届出制となったゲノム編集食品について確認した結果、厚労省などは届出はなく、国内ではまだ流通していないとの認識を示したと発表した。
北海道消費者協会によると、厚労省のゲノム編集食品のページに記載がないのは届出が完了した案件がないことかとの質問に厚労省は「10月7日時点において、届出されたゲノム編集技術応用食品等はない」「国内には、まだ出回っていないものと承知している。」と回答したという。相談については、「開発者等の情報保護のため、その件数や詳細については回答を控えたい」としたという。
・北海道消費者協会, 2020-10-8ゲノム編集食品の相談と届出については、10月15日開催された「2020年 全国GMナタネ自生調査報告会」での関係省庁との意見交換において環境省の担当者は、「ヒヤリングした限りでは、数件の相談があったと聞いている。詳細は明らかにできない」と答えている。
ゲノム編集食品が解禁されて1年以上経った現在でも、まだ1件の届出もないのは、解禁前の過熱した報道を見ると異常なことと思わざるを得ない。届出が義務でもなく罰則もない以上、届け出制度が有名無実化していることの表れではないか。
・厚労省このような届出ゼロの状況の中、サナテックシードは8月17日、同社のゲノム編集によって作出した高GABAトマトについて、米国農務省が規制対象の遺伝子組み換え作物に該当しないことを確認したと発表している。当然、販売に向けた相談と届出がなされると思われるが、いまだに届出が完了していないのは奇異に映る。
米国農務省には、遺伝子組み換え生物に該当するか相談と確認のプロセスがあり、その情報は一部を除き公開されている。先のサナテックシードのゲノム編集高GABAトマトについても、同社からの相談と農務省の回答文書が公開されている。
日本の制度は、過度に開発元の技術情報を「保護」しようとしているとしか思えない。米国の制度と運用を見れば、相談について情報公開したとしても問題は生じていないようだ。厚労省が相談件数まで厳秘を貫くのは、実質的な届出制度の無効化を考えているようにも見えてくる。このままでは、ゲノム編集食品の届出はゼロのまま、なし崩し的な流通が始まる可能性が懸念される。厚労省は流通はないとの認識のようだが、確認しようがないが、すでに、ひそかに流通が始まっているかもしれない。
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