

ペルー議会はこのほど、ペルーにおける遺伝子組み換え作物導入に関する一時停止(モラトリアム)をさらに15年の延長について、賛成104、棄権7、反対0という圧倒的多数で承認した。
遺伝子組み換えフリー・ラテンアメリカ・ネットワーク(RALLT)によれば、議会で圧倒的多数で継続が決まった背景には、多くの農業団体や有機生産者、先住民、環境団体、農村開発関係者による粘り強い働きかけがあったからだという。こうした遺伝子組み換え作物導入一時停止継続を求める人々は、業界に近い科学者から、反科学であるとか、反進歩主義というレッテル張りの攻撃に直面していたという。
ペルー周辺は、ジャガイモや雑穀のキヌアなどの原産地と多様性の中心となっている。モラトリアムの延長を求める団体は、この地域の農業生物多様性の保護の重要性と、遺伝子組み換え作物の危険性についての人びとの意識を高めるために、ペルー各地でワークショップを開催してきたという。こうした地域での活動が、業界などの攻撃をはね返したもといえるかもしれない。
・Biodiversidad LA, 2020-10-15南米は遺伝子組み換え作物の栽培が盛んであり、ブラジルなど南米15か国のうち6か国が遺伝子組み換え作物の商業栽培国である。ペルーが国境を接するブラジル、ボリビア、チリ、エクアドル、コロンビアのうちチリとエクアドルを除く3か国は、ブラジルを筆頭にして遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆、ワタなどの商業栽培国である。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の推計によれば、ブラジルやアルゼンチンの遺伝子組み換え作物はそれぞれ9割以上だという。
ペルーを原産とするジャガイモなどが遺伝子組み換えされ、周辺地域で栽培が始まった場合、それらの多様性が失われる可能性が懸念される。遺伝子汚染の懸念はすでに現実のものとなっている。トウモロコシの原産国のメキシコでは、米国から輸入された遺伝子組み換えトウモロコシにより、原種といわれるテオシントに遺伝子組み換え品種の遺伝子汚染が生じたといわれている。多様性を維持するという点からも、ペルー議会が承認した遺伝子組み換え作物のモラトリアムをさらに15年延長するという、今回の承認は時宜にかなっている。
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