最終更新日:2020年11月11日
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2020.11.11 No.1092
■RNA干渉害虫抵抗性GMトウモロコシ承認へ動く米国 非標的生物への影響は未知数
western_corn rootworm_larvae.jpg / Wikimedia
トウモロコシ根切り虫(western corn rootworm)の幼虫 / Scott Bauer, USDA / Wikimedia

 米国農務省動植物検疫局(APHIS)は11月2日、パイオニア・ハイブレッド申請による、新たな害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシについて、60日間の意見公募を始めた。害虫の体内で必要なタンパク質の発現を抑制するような特定の遺伝子を作り出すことで、この遺伝子組み換えトウモロコシを食べた害虫を駆除しようという、新しいタイプである。標的でない他の生物に対して、この遺伝子組み換えトウモロコシの影響は明らかになっているわけではない。環境影響が未知数のまま商業栽培を認めることは、新たな環境破壊への懸念が残る。

 これまでの害虫抵抗性遺伝子組み換え作物は、トウモロコシ根切り虫のような害虫にとって致死的な毒物であるBt毒素を産生し、その毒素を摂取させて死に至らせようというものであったが、Bt毒素に耐性を持つスーパー昆虫が出現し広がってきている。米国農務省は先ごろ、この従来のBt害虫抵抗性品種の段階的登録取消に向けて意見公募を始めるなど、Bt害虫抵抗性遺伝子組み換え作物の行き詰まり打開へ動き出したばかりである。

western-corn-rootworm-1.jpg / Flickr
トウモロコシ根切り虫(western corn rootworm)の成虫 / Sarah Zukoff / Flickr

 パイオニアの害虫抵抗性遺伝子組み換えトウモロコシ(DP23211)は、トウモロコシ根切り虫(western corn rootworm, Diabrotica virgifera virgifera)の特定のタンパク質遺伝子の一部と一致するように設計された二本鎖RNAを作り出すように遺伝子組み換えされているという。トウモロコシで作られたこの二本鎖RNAは、RNA干渉(RNAi)作用によりトウモロコシ根切り虫の体内で、腸のタンパク質の発現を抑制するという(遺伝子サイレンシング)。このGMトウモロコシが作り出す二本鎖RNAを摂取すると、特定のタンパク質の発現が抑制され、トウモロコシ根切り虫が死に至るという。

 このRNA干渉害虫抵抗性遺伝子組み換えトウモロコシ(DP23211)のキーとなる遺伝子配列は、標的となるのトウモロコシ根切り虫由来だという。申請者のパイオニア・ハイブレッドは、ミツバチなど受粉媒介生物(ポリネーター)や土壌生物、水生生物、捕食動物などに「有害な影響を与えることはないと予想される」としているだけで、その影響ははっきりしていない。遺伝子の水平伝達による他の種への影響への懸念が払底されているわけではない。

 また、この遺伝子組み換えトウモロコシは、除草剤グルホシネート耐性でもあるとしている。グルホシネート耐性は、グリホサートを大量に使ったことでグリホサート耐性雑草が蔓延している状況に、有害雑草に耐性のない別の除草剤で対応しようという小手先の対応に過ぎない。グルホシネートは生殖毒性が疑われ、すでにEUでは登録が失効し禁止農薬となっている。また、EUの禁止に先立ちグルホシネートを禁止したフランスは、禁止の理由として、使用している労働者やその周辺の人びと、周辺に居住したり頻繁に訪れる子どもへの健康リスクを除外できないとしている。こうしたヒトの健康影響からも、この遺伝子組み換えトウモロコシは問題が大きい。

 ・APHIS, 2020-111-2  ・Pioneer Hi-Bred International

 デュポンの関連会社であったパイオニア・ハイブレッドは、ダウとデュポンの合併により分社化されたコルテバの関連会社となっている。

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