

メキシコ政府は12月31日、遺伝子組み換えトウモロコシの栽培許可を取り消すとともに、2024年までにグリホサートの使用と遺伝子組み換えトウモロコシの輸入を段階的に禁止する大統領令を発出し官報に掲載した。禁止に反対する農業・農村開発省の抵抗で、昨年9月には禁止を進めていたトレド環境相が「健康上の理由」で辞任していた。この大統領令は、翌日の21年1月1日より施行された。
有機生産者はこの大統領令を歓迎している。メキシコ有機生産者協会代表のホメロ・ブラスさんは、「これは大きな勝利だ」と述べたという。遺伝子組み換え作物に反対してきた人びとは、遺伝子組み換えトウモロコシについて、古くからある在来品種のトウモロコシを汚染し、公衆衛生を危険にさらし、生物多様性を害する危険な農薬の使用を奨励していると非難していた。
一方、バイエルの地域販社の役員でメキシコ全国農業協議会の広報担当のラウラ・タマヨさんは、「栽培の選択肢がないということは、米国のトウモロコシ農家のような競合他者に比べて不利な立場に立たせている。米国からの遺伝子組み換え穀物の輸入は、多くの農産物製品にとって不可欠」と述べたという。
メキシコは2013年から、遺伝子組み換えトウモロコシの環境放出が裁判所の命令で禁止されているが、今回の大統領令で正式に禁止されることになる。メキシコはトウモロコシの原産地でもあるが、畜産飼料の多くが米国からのGMトウモロコシに依存しているという。
しかし、この大統領令も行政機関によるサボタージュで骨抜きの可能性もある。メキシコ最高裁は2015年、遺伝子組み換え大豆の栽培を禁止する判決を下したが、監督機関の“サボタージュ”で2017年まで違法栽培が続いていたという。
・Reuters, 2021-1-2メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は昨年8月、任期である24年後半までにグリホサートを段階的に禁止すると言明したとロイターが伝えていた。グリホサートの段階的禁止については、環境天然資源省が今年6月、24年までに禁止を表明していたが、農業・農村開発省が異議を唱え政府内で紛糾していたという。
オブラドール大統領は昨年8月、24年までの段階的グリホサート禁止を明言していたが、政策の推進役であったトレド環境相が「健康上の理由」で辞任した。ロイターは政策をめぐる閣内での衝突が理由と報じた。
・Reuters, 2020-9-2環境天然資源省はの昨年6月の声明で、同省再生可能天然資源局長のアデリタ・サン・ビセンテ・テッロ博士が「生産性を超えて人と環境の健康がある」とヒトと環境が優先されるとの立場を強調していた。メキシコは一昨年11月、1千トンのグリホサートの輸入にストップをかけている。
・Reuters, 2020-8-13【関連記事】
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