オーストラリアのクイーンズランド工科大学(QUT)は2月17日、フザリウム菌が原因のフザリウム萎凋病、別名パナマ病TR4により危機的な状況といわれるキャベンディッシュ種バナナに対して、ゲノム編集技術を使い、TR4耐性バナナを開発したと発表した。遺伝子組み換えではなく、発現していない耐病性遺伝子を発現させたとしている。
クイーンズランド工科大学は、金額を明らかにしていないが、果実や野菜のメーカーであるフレッシュ・デルモンテから数百万ドルの資金提供を受け、今後5年で商業栽培用の品種を開発するとしている。資金を提供したフレッシュ・デルモンテは日本に子会社を設けている。この耐病性バナナは、外来遺伝子の挿入がないとしているので、日本でも表示なしで流通する可能性がある。
クイーンズランド工科大学は2017年、遺伝子組み換えによりTR4耐性遺伝子組み換えバナナを開発したと発表した。同年12月、フィリピンのミンダナオで試験栽培を計画していると地元紙が報じた。この試験栽培に、ミンダナオのバナナ生産者と輸出業者らは、「地域の生産物の市場性に影響を及ぼす」として反対を表明していた。生産者らは、遺伝子組み換えバナナの試験栽培がバナナ市場に謝ったシグナルを送るかもしれず、フィリピンの主要輸出農産物のバナナにとって脅威となるとしていた。
フランス研究機関 従来育種で耐病性バナナを開発
クイーンズランド工科大学のように、遺伝子組み換えやゲノム編集を使った耐病性バナナの開発の一方で、従来育種による耐病性品種の開発も行われている。フザリウム萎凋病ではないが、バナナを絶滅させるとも言われてきた病害の一つ黒シガトカ病に耐性のある新品種も開発され、有機バナナとしてフランスで販売されているという。
フランス農業開発研究国際協力センター(CIRAD)は2020年2月、黒シガトカ病耐性の新品種「ポワントドール」を、遺伝子組み換え技術を使うことなく従来の交配技術で開発し、2020年3月から有機バナナとして、フランスで販売を始めると発表した。
黒シガトカ病耐性バナナ「ポワントドール」は、カリブ海のフランス海外県のグアドループ島とマルティニーク島で生産され、今年1000トン余りを出荷できるとしている。フランスのカルフールの店頭に並ぶとしていた。
黒シガトカ病は、子嚢菌の一種によりバナナの葉が黒く変色して、光合成を阻害し収穫量が半減する。一時はキャベンディッシュ種のバナナが全滅するともいわれていたという。この防除には殺菌剤を1年に30回以上散布するという。
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