農水省は3月3日、遺伝子組み換え作物3品目を承認した。第一種使用が遺伝子組み換えナタネと、花色を操作した遺伝子組み換えコチョウランの2品目であり、遺伝子組み換えカラシナの隔離圃場での試験栽培も承認された。初めての承認となる遺伝子組み換えカラシナは、在来カラシナとの交雑が懸念される。
承認された第一種使用の一つは、BASFの除草剤グルホシネート耐性・雄性不稔のGMナタネMS11で、栽培と食用、飼料用で承認された。このGMナタネは19年11月に食品として承認済みである。
もう一つの第一種使用の承認は、石原産業の花色が青紫色のファレノプシス(胡蝶蘭)で、規制なしの栽培を認めた。これは、筑波大学とインプラタイノベーショズ、石原産業の3社が開発したコチョウランで、ツユクサ由来の遺伝子を組み込んでいるという。
・農水省, 2021-3-3今回、隔離圃場での試験栽培が承認された遺伝子組み換えカラシナは、BASFの除草剤グルホシネート耐性及び稔性回復性GMカラシナである。申請書によれば、このGMカラシナは、茨城県筑西市にあるバイエルクロップサイエンス・明野事業所の隔離圃場で23年7月まで試験栽培が計画されている。
これまで遺伝子組み換えカラシナの申請はなく、このGMカラシナが日本で初めての申請となる。今回の申請は隔離圃場での試験栽培だが、一般使用で栽培が認められた場合、在来カラシナとの交雑が懸念される。この点について、生物多様性影響評価検討会農作物分科会は「なお、本組換えカラシナの一般申請にあたっては、河川敷にカラシナが多く生育しているため、公的機関によるモニタリングの実施について検討を要すると判断した」と特記している。しかしながら、総合検討会ではこの部分に異議が出て削除されている(総合検討会議事録12ページ)。このためか、「農作物分科会における検討の結果」は、現在閲覧できなくなっている。
今回承認された3品目に関する意見公募(パブリック・コメント)では、GMナタネとGMカラシナについて交雑を懸念する意見が64件あったとしている。この点について農水省は、「交雑体が広がったりする等の生物多様性影響はこれまで確認されていません」「今後、一般使用申請があった場合には、内容を審査の上、モニタリングの必要性について検討していくことになります」と回答している。しかし、農水省が行っているモニタリングは、荷揚げ港の周辺5キロに範囲にとどまっている。例えば、荷揚げ港の一つ四日市港では、荷揚げされたGMナタネは約40キロ離れた製油工場まで運ばれているにもかかわらず、農水省のモニタリングはその経路を十分にカバーしていない。四日市では長年にわたり、こぼれタネによるGMナタネの自生や交雑を懸念した市民による調査と抜き取りが行われ、交雑したと思われる個体がいくつも見つかっている。形だけのモニタリングでは意味がないことは誰の目にも明らかである。アリバイつくりだけの「モニタリング」から実効性のある措置に転換すべきだ。
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