

カナダのトロント大学などの研究グループは2月3日、環境濃度のネオニコ系農薬イミダクロプリドに暴露されたノドアカハチドリエネルギー代謝が、曝露の2時間以内に25%減少した、と専門誌(サイエンティフィック・リポーツ誌電子版)に発表した。研究グループは、イミダクロプリド曝露後の代謝の変化は、ハチドリの生存に重要な影響を及ぼす可能性があるとしている。ハチドリも受粉媒介生物(ポリネーター)の一つである。
研究グループの一人でハチドリ専門家のウェルチ氏は、ハチドリは農薬が散布された植物の花蜜を摂取や汚染された昆虫を食べるなど、さまざまな経路で摂取する農薬による悪影響を受けやすく、中枢神経系に長期的な影響を与える可能性があると指摘している。そして、長期的な曝露によりハチドリに潜在的なリスクが存在すると考えられるが、はっきりしていないとして、さらなる研究が必要だという。
ウェルチ氏はまた、脊椎動物や受粉媒介生物(ポリネーター)が活動している時期には農薬散布による曝露の可能性を減らすため、ある程度の配慮が必要であると述べている。しかし、2018年に発表されたカナダ環境・気候変動省などの研究グループによれば、ネオニコチノイド系イミダクロプリドを散布していたブルーベリー農場で、散布1年後にもブルーベリーの花からイミダクロプリドが検出されているという。このことは、例えば、米国のネオニコチノイド系スルホキサフロルでは開花期の使用禁止が条件とされているが、ネオニコチノイド系は長期の残効性を特徴としていることから、時期的な規制の効果は限定的であるといえる。
・Scientific Reports, 2021-2-3 ・University of Toronto, 2021-2-18 ・Environmental Toxicology and Chemistry, 2018-7-5ネオニコチノイド系殺虫剤の鳥類への影響はこれまでにも、いくつかの研究が発表されている。例えば、カナダ・サスカチュワン大学などの研究グループは2019年9月、渡り鳥が途中の休憩地で、ネオニコチノイド系農薬に汚染された餌を食べた場合、急激に体重や脂肪が減少し、出発の時期に大きな影響を与えるとする研究結果をサイエンス誌(電子版)に発表している。米国・イリノイ大学などの研究グループは昨年8月、ネオニコチノイド系農薬の使用量の増加が米国の草地における鳥類の個体数減少の要因であり、鳥類の多様性を低下させている可能性があるとする研究結果をネーチャー・サスタナビリティ誌に発表している。こうした例にもみるように、ネオニコチノイド系農薬は、ミツバチなどの昆虫類ばかりでなく、鳥類の多様性にも大きな影響を与えている。
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