最終更新日:2021年4月4日
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2021.04.04 No.1111
■農薬使用量減少もリスクは増加 ネオニコが大きな要因
Bee-on-apple__.jpg / Flickr
リンゴの花とミツバチ / TJ Gehling / Flickr

 米国の農薬使用量が減少し脊椎動物への影響が減少しているにもかかわらず、ネオニコチノイド系農薬などの使用増加で、昆虫や水生無脊椎動物に対して毒性量が大幅に増加したという研究がサイエンス誌に発表された。ドイツのコブレンツ・ランダウ大学の研究グループが4月2日に発表したもので、ミツバチなどの花粉内科医昆虫では、この10年間に2倍に増加し、遺伝子組み換え作物でも従来作物と同じように毒性量が増加しているとしている。研究グループは、農薬の使用量の減少が環境影響を減少させているという主張と矛盾すると指摘している。

 研究グループは、米国地質調査所(USGS)と米国環境保護庁(EPA)のデータを使い、1992年から2016年の25年間について、381農薬の使用量の変化とともに、米国環境保護庁による農薬の活性成分の閾値を用いて8つの非標的種グループに対する毒性の影響を分析した。研究グループは、農薬の使用量とその活性成分の毒性閾値から、その「総毒性量」を検討したという。

 米国の農業で使用される殺虫剤の量は1992年から2016年の25年で40%以上も減少し、使われる殺虫剤が有機リン系からネオニコチノイド系やピレスロイド系に移行した結果、哺乳動物や鳥類などの脊椎動物への毒性量は減少しているという。しかし、殺虫剤の総量が減少しているにも関わらず、水生無脊椎動物やミツバチのような花粉媒介昆虫は、ネオニコチノイド系などの使用増加に伴い、その受ける毒性量は、2005年から2015年の10年間で2倍に増加したという。

 遺伝子組み換え作物は、農業における化学農薬への依存度を下げる喧伝されてきた。しかし、米国で主要な2つの遺伝子組み換え作物であるトウモロコシとダイズにおいても、遺伝子組み換え作物の導入が進むにつれて、従来作物と同じように毒性量が増加していることが明らかになったという。

 さらに除草剤では、使用量とともに適用毒性が増加し、陸生植物への毒性が最も高くなっているという。植物と花粉媒介昆虫は生態学的に強く結びついていることから、植物と花粉媒介昆虫の双方で、同時に毒性量が増加することは、植物と昆虫の生物多様性に全体的に強い悪影響を及ぼす可能性がある、と警告している。

chemical-spray.jpg / Flickr
農薬散布(米国) / Aqua Mechanical / Flickr

 これらの結果は、在来作物と遺伝子組み換え作物の両方で化学農薬の環境への影響が減少しているという主張に異議を唱え、世界中の農業で適用されている農薬の毒性を低減するための対策を求めるものだとしている。

 この研究は、単位面積当たりの農薬使用量での比較から一歩進めて、その毒性量による比較検討の必要性を示した研究といえる。しかし世界的には、こうした議論のベースとなる農薬使用量のデータがきちんと公開されていない現状があり、まず、各国政府はこうしたデータを明らかにする必要がある。

 ガーディアン紙(電子版)によれば、研究を主導したラルフ・シュルツ教授は、「脊椎動物に対して特に毒性の高い化合物が、脊椎動物毒性の低い化合物に取って代わられており、これは確かに成功です。しかし同時に、殺虫剤はより特異的になり、そのため残念なことに、花粉媒介生物や水生無脊椎動物のような非標的生物に対しても毒性が強くなりました」と述べている。さらに「遺伝子組み換え作物は、農業の化学農薬への依存度を下げるという論法で導入されました。毒性レベルを見れば、これは明らかに真実ではありません」と指摘している。遺伝子組み換え作物によって農薬の必要性が減るという主張にもかかわらず、遺伝子組み換え作物に使用される農薬の毒性の影響は、従来の作物と変わらないことも明らかになったとしている。

 ・Science, 2021-4-2  ・EurekAlert, 2021-4-1  ・Guardian, 2021-4-1

 同様の研究結果が昨年1月に発表されている。米国ペンシルベニア州立大学などの研究グループによるもので、米国環境保護庁(EPA)と米国地質調査所(USGS)、米国農務省(USDA)の公表データを使って、1997年から2012年におけるミツバチの受ける毒性量を、米国の郡単位で算出した。この期間で殺虫剤の散布量は減少しているのも関わらず、ミツバチの接触毒性量が比較的安定している一方で、経口毒性量は平均で9倍、最高では121倍に増加したという。研究グループは、トウモロコシと大豆でのネオニコチノイド系殺虫剤で処理した種子を使用していることが原因だと思われるとしている。

 ・Scientific Reports, 2020-1-21  ・Pennsylvania State University, 2020-1-21

 米国のトキシコロジー・リサーチ・インターナショナル(Toxicology Research International)などの研究グループも一昨年8月、米国でのミツバチに対する経口毒性量の急激な増加を報告している。90年代にネオニコチノイド系農薬が導入されて以降、この約25年間に米国の農業環境における昆虫への経口毒性は48倍増加し、その92%がネオニコチノイド系農薬に起因するという。

 研究グループは、米国の農地とその周辺地域での急性殺虫剤毒性負荷(AITL)を、経口毒性と接触毒性に分けて算出している。殺虫剤の経口AITLの合計は、接触AITLの合計よりも桁違いに大きいとしている。その上で、ネオニコチノイド系のイミダクロプリドとクロチアニジン、チアメトキサムがこの毒性負荷の増加の主な原因であり、2014年のすべての殺虫剤の総毒性負荷の接触毒性61%から経口毒性の99%を占めていると分析している。

 ・PLOS ONE, 2019-8-6  ・Friends of the Earth, 2019-8-6

 農水省はこれまで、ネオニコチノイド系殺虫剤が日本では主に稲作に使用され、大豆やトウモロコシなどの種子処理剤として使用される欧米との違いを挙げて、日本では大きい問題ではないと主張してきた。21年度から始まる農薬再評価において、ネオニコチノイド系殺虫剤も優先的再評価の対象となっている。EUはすでに、一部のネオニコチノイド系農薬の屋外使用の禁止や登録失効を実施しているが、欧州食品安全機関(EFSA)は2019年、ネオニコチノイド系殺虫剤の一つであるチアクロプリドについて、発がん性が疑われる物質であり、生殖毒性があり内分泌かく乱物質(環境ホルモン)だとする報告書を公表しているように、ヒトの健康への影響も明らかになりつつある。

 3月の正式決定された農水省の「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめでは、化学農薬の半減に向けた工程表に、2040年代にネオニコチノイド系農薬を含む従来の殺虫剤を使用しなくてもすむような新規農薬などの開発を例示している。20年後などと悠長に構えず、ミツバチなどへの毒性量についての新たな知見なども踏まえ、早急に禁止へ動くべきだ。

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