最終更新日:2021年4月19日
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2021.04.19 No.1113
■グリホサート製剤の補助剤でマルハナバチの死亡率に大きな差 補助剤の評価が必要
bumblebee_nest.jpg / Flickr
土の中に巣をつくるマルハナバチ。グリホサートを散布すれば直接暴露する / Craig Chambers / Flickr

 グリホサート製剤に含まれる補助剤によってマルハナバチの死亡率が大きく異なり、補助剤の影響を含めた農薬評価が必要だとする研究結果が専門誌(Journal of Applied Ecology)に発表された。ロンドン大学ロイヤルホロウェイの研究グループによるもので、また、現行の毒性試験では除草剤製品の毒性を十分に評価できないため、農薬会社に対し、各農薬の配合成分の全リストを公開するよう求めるとしている。

 研究グループは、グリホサートの含有量の違う3種類のバイエルのラウンドアップ製品と、別会社のグリホサートを含む除草剤(Weedol)で実験を行った。ラウンドアップ製品のうち「Roundup(No Glyphosate)」は、グリホサートを含んでいない製品だという。

 これらの除草剤をマルハナバチにスプレーした場合、ラウンドアップ(Ready-To-Use)では24時間以内で94%が死亡したのに対して、ラウンドアップ(ProActive)では30%、グリホサートを含むWeedolでは6%と大きな差があったとしている。グリホサートを含まないラウンドアップ(No Glyphosate)では96%であり、マルハナバチの死亡原因はグリホサートではなく補助剤に起因すると結論できるとしている。そしてラウンドアップ製品は、農業地域や都市部で重大な危害を与えることになるマルハナバチへの曝露を制限すべきであることが分かるとしている。

 研究グループは、除草剤やその他の殺虫剤に含まれる界面活性剤やその他の補助剤が、世界的なマルハナバチの減少に寄与している可能性があるとして、すべての農薬について、マルハナバチが採食する可能性のある植物への使用を明示的に禁止することを推奨するとしている。しかし採食植物だけへの限定は片手落ちの可能性がある。地上に巣をつくるマルハナバチのようなハチでは、雑草防除に散布されるグリホサートを直接浴びるケースも想定でき、マルハナバチが採食する植物だけでは影響を防ぐことはできない。

bumblebee_feeding.jpg / Flickr
地上近くで採餌するマルハナバチ / Leo-seta / Flickr

 ロンドン大学ロイヤルホロウェイのマーク・ブラウン教授は、「マルハナバチのような野生のハチは、野草や農作物に欠かせない存在であり、彼らがいなくなれば、生物多様性と食料安全保障の両方を失うことになります」「憂慮すべきことに、野生のハチは世界中で減少しており、その理由はまだ正確にはわかっていませんが、今回のような研究はその解明に近づけるものです」「今回の研究では、農業地域や都市部での除草剤の無差別な使用が、マルハナバチの健康を脅かす可能性があること、また、行動や除草剤の成分を変えるだけで、この危険性を即座に取り除くことができることを示しています」と述べている。

 ロンドン大学の研究を受けて、米国の食品安全センターと生物多様性センターは連名で、米国の農薬審査のあり方を変えるべきだとする声明を発表した。

 生物多様性センターのジェス・タイラーさんは、「この重要な研究結果は、米国における農薬製品の規制方法に致命的な欠陥があることを明らかにしています。問題は、バイデン政権がこの問題を解決するのか、それとも米国環境保護庁(EPA)が農薬の実害を無視するという過去の慣行を継続するのか、ということです」と述べ、現行の活性成分だけを審査している農薬登録制度の変更を求めた。

 食品安全センターの科学責任者、ビル・フリーズさんは、「米国環境保護庁(EPA)は、すべての農薬製剤についてハチへの毒性試験を要求しなければならず、科学者が研究できるように、秘密となっている補助剤の正体を公表し、ハチを殺してしまう可能性がある顕花植物へのラウンドアップ除草剤の適用を禁止しなければならない」と指摘している。

 ・Journal of Applied Ecology, 2021-4-8  ・Royal Holloway, University of London  ・Center for Biological Diversity, 2021-4-16

 この補助剤の毒性評価の必要性は、これまでにも指摘されている。ロンドン大学などの研究グループは2018年、グリホサートやネオニコチノイド系農薬を対象に絞った毒性評価の結果、界面活性剤などの補助剤が主成分よりも毒性が高いとする研究結果を発表している。中でも、住友化学のクロチアニジン製剤(Apache 50WG)のオオミジンコに対する毒性は、クロチアニジン単独よりも46.5倍高いことが判明しているとしている。この研究チームは、市販の農薬は全ての成分が同じリスク評価を受けるべきであると指摘し、一日許容摂取量(ADI)と残留基準値(MRL)の設定には安全係数の積み増しが必要だとも提言している。

 ・Frontiers in Public Health, 2018-1-22

 2017年に発表されたフランス・カーン大学のセラリニ教授らの研究では、グリホサート単独に比べ補助剤の毒性は1千倍以上あることを示したとしている。その補助剤の一つである界面活性剤POEA(ポリエトキシ化獣脂アミン)は、EUが2016年にグリホサートの暫定延長を決めた際に使用が禁止されている。

 ・Toxicology Reports, 2017-12-30

 この補助剤の問題は、今年度からグリホサート製剤も対象にした農薬再評価が始まる日本にも関わる問題である。

 4月14日の衆議院農林水産委員会で田村貴昭議員は、ラウンドアップの添加剤の面活性剤のPOEAについて、EUは禁止していると指摘して、再評価ではPOEA単独の評価をすべきではないかと質問した。これに対して野上農相は、明確に答えなかったものの「重要な課題と認識している」と答弁しているが、一過性の答弁に終わらせてはならない。田村議員はまた、予防原則の観点に立ってグリホサートを禁止すべきではないかと質問したが、野上農水相は明言しなかった。

 ・衆議院, 2021-4-14

 優先再評価にはグリホサート製剤とともにネオニコチノイド系のアセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニンン、ジノテフラン、チアメトキサムも対象とされている。ロンドン大学やカーン大学などの研究が示すように、補助剤の影響も無視できない以上、農薬評価は製剤としての評価に変更し、早急に規制を強化すべきだ。

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