養鶏飼料中の残留グリホサート濃度が卵の孵化に影響を与え、濃度が高くなるほど孵化率が低下する傾向があるとデンマークのオーフス大学の研究グループがScientific Reports(電子版)発表した。孵化率が低下は、痕跡レベルのグリホサートでも胚の発育に悪影響を及ぼしたためと考えられるとしている。
調査した5か所のひな鶏生産で親鶏に与えられる飼料中の残留グリホサートは0.05ppmから0.15ppmの範囲であり、残留グリホサートの濃度が高いほど孵化率が低下する傾向があったという。一方、産卵生産性には影響がなかったという。ブロイラー用の卵が入手できなかった研究グループは、食料品店で慣行飼養の卵8カートンと有機卵8カートンを購入して卵黄中の残留グリホサートを調べた。各カートンから3個ずつをサンプリングした結果、慣行卵の9個、有機卵の2個からグリホサートの痕跡が見つかったという。
これらの結果から、ひな鶏生産で給餌される飼料においても食料品店で購入した卵と同等の残留グリホサートが含まれていると考えると、残留グリホサートが痕跡レベルであったとしても孵化率に悪影響を及ぼすと思われるとしている。研究グループはまた、残留濃度のレンジが0.05ppmから0.15ppmと狭く、「グリホサート残留濃度との有意な関連性および非有意な関連性を解釈する際には、留意する必要がある」としている。
・Scientific Reports, 2021-9-29卵に残留するグリホサートに関して、昨年、一つの研究結果がScientific Reports(電子版)に発表されている。トゥルク大学(フィンランド)の研究グループは、実験的に200ppmのグリホサートに調整した飼料ウズラに与えた結果、卵から0.76ppmの残留グリホサートを検出され、グリホサートに暴露した親ウズラの卵は、対照群に比べ胚の発育が悪い傾向にあったとしている。
・Scientific Reports, 2021-4-14グリホサートは「安全」とされてきたが、2015年、国際がん研究機関(IARC)は、公開データをもとにして、グリホサートには「おそらく発がん性がある」という評価を公表した。2019年7月には国際産婦人科連合(FIGO)が、「15年間に積み上げられた多くの証拠があり、予防原則にもとづきグリホサートは全世界的に、段階的に使用をやめるべきである」とする勧告を発表している。近年、グリホサートがヒトの健康に影響する可能性を示唆する研究結果が積みあがってきている。今回発表された生殖への影響など、この2年間でも次のような研究結果が発表されている。
【2020年】
【関連記事】
- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増