最終更新日:2021年10月18日
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■卵黄中の痕跡レベルのグリホサートが孵化率に影響
chicks.jpg / Flickr
ヒヨコ / Kabsik Park / Flickr

 養鶏飼料中の残留グリホサート濃度が卵の孵化に影響を与え、濃度が高くなるほど孵化率が低下する傾向があるとデンマークのオーフス大学の研究グループがScientific Reports(電子版)発表した。孵化率が低下は、痕跡レベルのグリホサートでも胚の発育に悪影響を及ぼしたためと考えられるとしている。

 調査した5か所のひな鶏生産で親鶏に与えられる飼料中の残留グリホサートは0.05ppmから0.15ppmの範囲であり、残留グリホサートの濃度が高いほど孵化率が低下する傾向があったという。一方、産卵生産性には影響がなかったという。ブロイラー用の卵が入手できなかった研究グループは、食料品店で慣行飼養の卵8カートンと有機卵8カートンを購入して卵黄中の残留グリホサートを調べた。各カートンから3個ずつをサンプリングした結果、慣行卵の9個、有機卵の2個からグリホサートの痕跡が見つかったという。

 これらの結果から、ひな鶏生産で給餌される飼料においても食料品店で購入した卵と同等の残留グリホサートが含まれていると考えると、残留グリホサートが痕跡レベルであったとしても孵化率に悪影響を及ぼすと思われるとしている。研究グループはまた、残留濃度のレンジが0.05ppmから0.15ppmと狭く、「グリホサート残留濃度との有意な関連性および非有意な関連性を解釈する際には、留意する必要がある」としている。

 ・Scientific Reports, 2021-9-29

 卵に残留するグリホサートに関して、昨年、一つの研究結果がScientific Reports(電子版)に発表されている。トゥルク大学(フィンランド)の研究グループは、実験的に200ppmのグリホサートに調整した飼料ウズラに与えた結果、卵から0.76ppmの残留グリホサートを検出され、グリホサートに暴露した親ウズラの卵は、対照群に比べ胚の発育が悪い傾向にあったとしている。

 ・Scientific Reports, 2021-4-14

 グリホサートは「安全」とされてきたが、2015年、国際がん研究機関(IARC)は、公開データをもとにして、グリホサートには「おそらく発がん性がある」という評価を公表した。2019年7月には国際産婦人科連合(FIGO)が、「15年間に積み上げられた多くの証拠があり、予防原則にもとづきグリホサートは全世界的に、段階的に使用をやめるべきである」とする勧告を発表している。近年、グリホサートがヒトの健康に影響する可能性を示唆する研究結果が積みあがってきている。今回発表された生殖への影響など、この2年間でも次のような研究結果が発表されている。

【2019年】
5月)千葉大学の研究グループはマウスを使った実験で、妊娠中のグリホサート摂取が子どもの自閉症発症に影響している可能性を示したと発表。
7月)アルゼンチンの研究グループは、妊娠中のラットにグリホサート系製剤とグリホサートを妊娠日9日から離乳まで経口投与すると、その親から生まれた雌のラットで着床失敗が増加。グリホサートとグリホサート系製剤が着床異常に関連している可能性があると発表。
7月)イタリアなどの研究グループは、豚をモデルにしたグリホサートが哺乳類のオスの生殖細胞に影響を与えると発表。
8月)イタリア・トリノ大学などの研究グループは、グリホサートとチアクロプリドとイミダクロプリドが比較的高い濃度で内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の可能性を示したと発表。
10月)ブラジルの研究グループはグリホサートに遺伝毒性があるとする研究結果を発表。ブラジルの水におけるグリホサートの許容濃度でも遺伝毒性を生ずる可能性があると警告。
11月)フィンランドのトゥルク大学の研究グループは、グリホサートがヒトの腸内細菌叢の約半分が影響を与える可能性があると発表。
11月)イタリア・サレント大学などの研究グループは、グリホサートとグルホシネートは低い濃度でヒト精子のミトコンドリアに悪影響を与えると発表。
12月)米国ワシントン州立大学の研究グループは、グリホサートに曝露したラットの遺伝子に変化が生じ、孫やひ孫の世代の病気の増加につながると発表。
12月)ブラジルの遺伝子組み換え大豆栽培地域の下流域で乳児死亡率や早産発生率、低体重児発生率が増加していると米国コロンビア大学などの研究グループが発表。

【2020年】
1月)ロンドン大学などの研究グループは、欧米の規制当局が安全とする低い濃度のグリ―サートとラウンドアップがヒトの細菌叢を変化させる可能性があるという研究結果を発表。
2月)ケニア・ナイロビ大学などの研究グループは、ケニアで流通しているグリホサート系除草剤は、長期に摂取した雄のモルモットの生殖器官や肝臓、腎臓に悪影響を与えると発表。
3月)米国などの研究グループは、母親が妊娠中に暴露したグリホサートが多いほど生まれた女児の肛門性器間距離が男性型に近づき、グリホサートが環境ホルモンであることを示唆していると発表。
4月)ロンドン大学などの研究グループは、グリホサート系除草剤がヒトに対して安全とされる低レベルでもDNAを損傷させると発表。
5月)ミシガン大学などの研究グループは妊娠26週前後の妊婦のグリホサートとその代謝物AMPAの尿中濃度が高いと早産しやすいと発表。
6月)グリホサートの慢性的な暴露が精子の数を低下させる可能性があるとチェコ工科大学などの研究グループが米国化学会誌に発表。
9月)グリホサートなどへの暴露がALSの潜在的なリスク要因になると米国の研究グループが発表。

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