薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会は6月15日、グルホシネートの残留基準値改定に関する報告書をまとめた。改定された基準値案では、約4割の品目の残留基準値が変更され、一部を除き残留基準値が引き下げられ厳しくなっている。今回の改定は、サトウキビへの適用拡大申請に伴うもので、その残留基準値は0.03ppmに設定された。規制強化は歓迎すべきことだが、グルホシネートは生殖毒性が疑われ欧州では禁止農薬となっており、妊婦や乳幼児への影響が懸念される。予防原則に立ち、より強化すべきではないか。
食品安全委員会は今年3月、グルホシネートの健康影響評価書を公表し、この評価をもとに今回の改定案が設定された。公表された改定案によれば、145品目中58品目の残留基準値が改定された。残留基準値が緩和されたのはキウイで、果皮を含む全体に変更の上、0.2ppmが0.6ppmに設定されている。
・農薬・動物用医薬品部会、2022-6-15 ・食品安全委員会, 2022-3フランスは2017年10月、生殖毒性の疑いがあるとしてグルホシネートの登録を取り消した。欧州委員会は2018年、グルホシネートの農薬登録の延長手続きを行わず、その登録が失効しているが、食品に残留しているグルホシネートについて基準値が設定されている。日本と品目の区分けに違いがあり単純な比較ができないが、同じ品目69品目について、残留基準値を比較すると、半数の35品目の残留基準値が日本より厳しく設定されている。残留基準値が同じものは30品目。日本の方が厳しく設定されているのは、米、ジャガイモ、乳などわずか5品目に過ぎない。残留基準値は最大限許される量であり、単純にはいえないものの、日本で流通する食品の実際の残留データが望まれる。
輸入量と農薬としての出荷量に大きな差
日本では現在も24品目のグルホシネート剤が登録されている。国立環境研究所のまとめによれば、近年、毎年おおよそ400トン(原体換算)近くが出荷されている。2019年度の出荷量は384トンとなっている。しかし、『農薬要覧』によれば、農薬としての出荷量以上の原体が輸入されている。20年からは1600トン余りの製剤が輸入されている(濃度が不明のため原体換算量は不明)。
『農薬要覧』のデータでは、グルホシネートの農薬としての輸出は原体、製剤ともにゼロである。したがって、この輸入量と国内出荷量の差400トンから500トンがどこへ消えたかが問題になる。農薬外での輸出量が不明であり一概に言えないが、ドラッグストアなどで農薬外の日用品として販売されている可能性があるかもしれない。
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