最終更新日:2022年7月13日
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2022.07.13 No.1136
■EU ネオニコの残留基準値を実質ゼロに 環境影響リスクで残留基準値を設定
bee_rape.jpg / Flickr
ネオニコを使ったナタネの花蜜にもネオニコが含まれる / Gilles San Martin / Flickr

 欧州委員会は7月6日、世界的に減少する花粉媒介生物(ポリネーター)対策として、ネオニコチノイド系のクロチアニジンとチアメトキサムの残留基準値について、一部を除き0.01ppmとする改定案をWTOに通知した。欧州委員会はWTOへの通知にあたり、「世界的な環境問題である受粉媒介者の減少に対処するものである」と、花粉媒介生物の減少に対応するものと明記した。

 これまでの食品の残留基準値は、ADIなどヒトの健康上の影響を元にして設定されてきた。今回の欧州委員会の提案は、欧州委員会が2030年までに農薬使用量(リスク換算)を半減するという意欲的な政策(Farm-to-Fork、Biodiversity Strategy)を進めているとは云え、世界で初めて、ヒト以外の環境影響リスクを残留基準値の設定に持ち込んだものとして歴史的なトピックになることに間違いないだろう。

 欧州委員会はWTOへの通知文書で、途上国への配慮から、この残留基準値の改定について36カ月の移行期間を置くことを提案している。

 この改定案にはWTO加盟国からの異議が出て長引くのではないか。

 欧州委員会が残留基準値を改定しようとしているこの2つのネオニコ系農薬は、EUでは、2018年に屋外使用を禁止した後、2019年に登録が失効している。

 今回の欧州委員会の改定案にCAP Reform は、「EU、国際農業貿易に手りゅう弾を投げ込む」との見出しで報じた。GM Watch は、「ネオニコの残留基準値を実質的にゼロにするEUの提案は、それらを使用して生産された製品の輸入を実質的に禁止する」と指摘している。

 ・WTO通知文書  ・CAP Reform, 2022-7-11

 欧州委員会は6月22日、2030年までに農薬使用量を半減させるためのEU規則案を公表した。規則案では次のような施策を挙げている。

  • すべての農家が、農薬使用を最後の手段として、その前に統合害虫管理(IPM)の確実な実施
  • 公園、学校、子どもの遊び場などの公共スペースや環境保護が必要とされている区域、その周囲3メートル以内での化学農薬の全面的禁止
  • 化学農薬使用とそれに伴うリスクの削減
    • より危険性が高い化学農薬の販売禁止
    • 総合的病害虫管理(IPM)のような化学農薬に 代わる技術の開発・普及
    • 有機農業の推進
    • 精密農業や新技術の活用
 ・European Commission, 2022-6-22

 EUの農薬データベースによると、現在有効なネオニコチノイド系農薬は、アセタミプリド、スルホキサフロル、フルピラジフロンの3種類だけである。ネオニコチノイド系ではないが、同じく浸透性農薬で、生鮮鶏卵の汚染がエッグ・スキャンダルとして問題となった、より毒性の強いフィプロニルは2017年に失効している。フィプロニルと同系のエチプロールは登録されていない。

220713_EU_neonics.png

 欧米では、EUを先頭にネオニコチノイド系農薬の見直しや規制強化が進んでいる。一方日本では、農水省が昨年度より農薬の再評価を開始し、イミダクロプリドなど4種類のネオニコ系やグリホサート系農薬について、最優先品目として評価を進めている。しかし、残念ながら、未だにその結論のおおよその目途すら明らかになっていない。

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