スルホキサフロルの残留基準値が8月10日付で改定された。この結果、一日当たりのスルホキサフロルの推定摂取量は、改定前に比べほぼ倍増した。残留基準値を設定する厚労省農薬・動物用医薬品部会の報告書によれば、2017年に行われた残留基準値の設定による一般(1歳以上の国民全体)の推定一日摂取量(EDI)は1日一人当たり230.1μg(一日許容摂取量(ADI)比9.9%)だったが、今回の改定で419.9μg(一日許容摂取量(ADI)比18.1%)とほぼ倍増した。
今回の改定による推定一日摂取量(EDI)は、年齢階層によって異なるが、一日許容摂取量(ADI)に対して妊婦の16.9%から幼小児(1歳から6歳)の37.8%だとしている。
一日許容摂取量(ADI)と急性参照容量(ARfD)は、2014年に設定されて以来変更されていないが、今回、残留基準値が大幅に改定された。一日許容摂取量(ADI)未満とはいえ、成長期にある1歳から6歳の幼小児の区分で摂取量比率が最も高く、健康影響への懸念が残る。
・厚労省 農薬・動物用医薬品部会資料, 2017-2-1 ・厚労省 農薬・動物用医薬品部会資料, 2021-12-7
小児の脳脊髄液からスルホキサフロル
今年初め、スルホキサフロルを含む3種類のネオニコ系農薬と代謝物が脳脊髄液から検出された、とローザンヌ大学などの研究グループが発表した。白血病とリンパ腫の治療を受けた14人の小児の髄液、血液、尿のサンプルからネオニコチノイド系農薬を分析した結果、14人のいずれもから、何らかのネオニコチノイド系農薬が検出されたという。そのうち13人の脳脊髄液サンプルからはアセタミプリドの主要な代謝物であるN-デスメチル-アセタミプリドが検出され、血漿/尿と脳脊髄液サンプルとN-デスメチル-アセタミプリドの濃度には統計的に有意な線形関係が見られたという。そして、ネオニコチノイド系農薬による汚染はハチなどの非標的昆虫だけでなく、子どもにとっても環境上の危険である可能性を示唆している、としている。
・Environmental Health, 2022-1-11スルホキサフロルなどのネオニコチノイド系農薬のヒトへの影響は解明されてはいない。今回の残留基準値の改定による推定摂取量が一日許容摂取量(ADI)未満であるからといって是認するのではなく、予防原則に立ち、できる限り摂取量を減らすことが求められる。
【関連記事】- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増