生殖毒性の疑われる除草剤グルホシネートの残留基準値改定に向けて意見公募が実施中だ。締め切りは11月11日。厚労省が示している今回の改定案では、144品目中43品目の残留基準値が厳しくなり、4品目が緩和されている。これにより前回(2014年)の改定と比較し、一日推定摂取量(EDI)は、許容一日摂取量(ADI)に対して平均で31.2%から16.7%に低減されることになる。残留基準値が厳しくなることは良い方向といえる。今年8月、ネオニコチノイド系のスルホキサフロルの残留基準値が緩和されたばかりで、今回のこの改定案がより際立って見える。
意見公募中の改定案では平均の一日推定摂取量はほぼ半減しているが、成長期にあり発達途中で農薬の影響を受けやすい幼小児(1〜6歳)では、許容一日摂取量の64.7%から36.2%にほぼ半減するものの、まだ高い状態にある。
今回の改定で残留基準値が厳しくなるのは白菜、キャベツ、トマト、キュウリ、リンゴ、牛の食用部分、豚の食用部分など43品目。一方、緩和されるのはサトイモ類、サトウキビ、鶏の食用部分、その他家禽の食用部分の4品目。
食品安全委員会は2021年8月25日付けで厚労省による諮問を受け審議の上、2022年3月9日に評価書を決定した。評価書を受けて食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会が残留基準値案を答申していた。
項 目 | 2013年 | 2022年 | |
---|---|---|---|
ADI | 0.0091 | 0.0091 | mg/Kg 体重/日 |
ARfD | − | 0.01 | mg/Kg 体重 |
年齢階層 | 2014年 | 2022年 |
---|---|---|
国民平均(1歳以上) | 31.2% | 16.7% |
幼小児(1〜6歳) | 64.7 | 36.2 |
妊婦 | 25.5 | 15.2 |
高齢者(65歳以上) | 28.5 | 17.8 |
フランスは2017年10月、生殖毒性の疑いがあるとしてグルホシネートの登録を取り消した。欧州委員会は2018年、グルホシネートの農薬登録の延長手続きを行わず、その登録が失効している。グルホシネートの残留基準値について、日本と品目の区分けに違いがあり単純な比較ができないが、同じ品目69品目について、今回の改定案とEUの残留基準値を比較すると、半数の35品目の残留基準値が日本より厳しく設定されている。残留基準値が同じものは30品目。日本の方が厳しく設定されているのは、米、ジャガイモ、乳などわずか5品目に過ぎない。
厚労省は毎年、マーケットバスケット方式で流通している食品の残留農薬を調査し公表している。しかし、対象農薬が48種類に過ぎず、グルホシネートは対象外となっている。限定された調査ではなく、日本で流通する食品の実際の残留農薬について調査すべきだ。
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