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ネオニコ系殺虫剤と子ども発達障害の関連が取りざたされていたが、明確にその関連を示す研究結果はなかった。2023年には日本のエコチル調査による分析からネオニコ系殺虫剤と発達障害の関連性を否定する論文が発表された。しかしこの数年、マウスなどの動物実験に加え、数百人規模の集団を対象とした研究で、その関連を示唆する研究結果が明らかになってきた。
● エコチル調査は関連を否定
国立環境研究所は2023年、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」による8,538組の母子のデータを用い、母親の妊娠中の尿中ネオニコ系殺虫剤を含む9種の浸透移行性殺虫剤とその代謝物の濃度と、4歳までの子どもの発達指標(保護者が記載した質問票)との関連について解析し、その結果、母親の妊娠中のネオニコ系殺虫剤暴露と4歳までの子どもの発達指標との間には統計学的な関連は見られなかった、と発表した。
・国立環境研究所, 2023-11-14 ・Environment International, 2023-10-13● バイエルなどの未公表データは関連を示唆
米国環境保護庁(EPA)に提出された未発表の農薬メーカーによる試験データを分析した結果、周産期に高用量のネオニコ系殺虫剤を投与されたラットの仔の脳組織に有意な萎縮が見られ、発達障害と診断されたヒトの脳にも同様に小さくなる傾向があり、周産期のネオニコチノイド曝露と注意欠如・多動症(ADHD)が関連する可能性を示唆している、と米国・食品安全センターなどの研究グループが査読付きの専門誌に2024年に発表した。
対象となったネオニコ系殺虫剤は、アセタミプリド、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、チアメトキサムの5種類。研究データは日本曹達(アセタミプリド)、住化武田農薬(クロチアニジン)、バイエ(イミダクロプリド、チアクロプリド)、シンジェンタ(チアメトキサム)によるもの。
これまでにネオニコ系殺虫剤は、ヒトの胎盤を通過し、また、血液脳関門を通過しヒトの脳脊髄液から検出されることが分かっている。したがって、胎児は胎盤を経由してネオニコ系殺虫剤に暴露することが分かっている。
研究グループは、米国環境保護庁(EPA)が人々に対して一定の保護措置を講じることができるよう、次のような規制変更を提言した。
- EPAに対し、規制目的で提出された重大な欠陥のある研究を却下すること、追加データの要求を履行すること、信頼できるデータが不足している場合は農薬の承認または再承認を取り消すか、差し控えることを義務付けること。
- 曝露限度を設定する際に、毒物による被害を受ける可能性の高い乳幼児に対する保護策を強化すること。
- ・複数の化学物質への同時曝露が予期せぬ害をもたらさないように、すべてのネオニコ系殺虫剤について累積的なリスク評価を実施すること。
研究グループのジェニファー・サス氏(NRDC:天然資源保護協議会)は「このデータはネオニコチノイドが哺乳類の初期発達期の脳に非常に有害であることを証明している。米国環境保護庁(EPA)は科学に基づき、これらの有害な殺虫剤の使用を制限すべきだ」と述べている。
同じく研究グループの食品安全センター・科学ディレクターのビル・フリーズ氏は「この研究は、ネオニコ系殺虫剤が発達中のヒトの神経系に有害であり、妊娠中の母親が喫煙を控えるのと同様に、ネオニコ系殺虫剤の使用を避けるべきであることを示唆する、ますます増えつつある証拠に貢献するものだ」と述べている。
・Center for Food Safety, 2024-10-22● 深せん市の幼児 ネオニコ暴露と神経行動発達の問題と関連
無作為に選んだ中国・深せん市の未就学児童506名について、8種類のネオニコ系殺虫剤(フロニカミドをネオニコ系として調査)と3種類の代謝物質の尿中濃度と神経行動の発達に関する研究の結果、ネオニコ系殺虫剤への曝露が就学前児童の神経行動上の問題と関連している可能性を示唆している、と中国・中山大学などの研究グループが2025年に発表した。
研究グループは、ネオニコ系殺虫剤への曝露が就学前児童の神経行動上の問題と関連している可能性を示唆しているとしている。中でも、イミダクロプリドと代謝物質のN−デスメチルアセタミプリド、N−デスメチルチアメトキサムが神経行動障害との有意な相関を示し、また、ネオニコチノイド混合物の複合効果も神経行動障害と相関を示し、低曝露レベルでも潜在的な悪影響が生じる可能性が示唆された、としている。そのうえで、イミダクロプリドとチアメトキサム、アセタミプリドの使用を削減し、子どもの神経発達への潜在的なリスクを軽減することを優先すべきと提言している。
・Toxics, 2025-10-14● 台湾 出生後の曝露は男児の神経発達に影響の可能性
> 台湾の母子273組の妊娠期と出生後の尿中ネオニコ系殺虫剤濃度と幼児期の発達に関する知能検査の結果、ネオニコ系殺虫剤への妊娠後期における曝露は神経発達に影響を与えないが、出生後の曝露は、特に男児の神経発達に影響を与える可能性があることを示唆している、と台湾の研究グループが2024年に発表した。
研究では、母親は妊娠後期に尿サンプルを、授乳開始後1〜3か月目に母乳サンプルを、子どもは尿サンプルを検査した。また、子どもは2〜3歳と4〜6歳に神経発達評価を実施した。
研究グループは、ネオニコ系殺虫剤曝露と神経発達との性別特異的な関連性を確認するには、より大規模なサンプルサイズを用いたさらなる研究が必要だとしている。
・Science of The Total Environment, 2024-6-22● 中国 ネオニコ系殺虫剤の出生前曝露が発達障害の原因の可能性
ネオニコ系殺虫剤への出生前暴露が就学前児童の発達に影響している、と中国・広西医科大学などの研究グループが2026年に発表した。広西チワン族自治区の114組の母子ペアを対象としたコホート研究で、ネオニコ系殺虫剤への出生前曝露と就学前児童の神経認知発達との間に潜在的な関連性があることを示唆しているとしている。
研究によると、ジノテフランとクロチアニジンへの曝露は全般的知能指数の低下と関連し、チアクロプリドへの曝露はコミュニケーション能力の低下と関連していた。また、イミダクロプリドおよびチアクロプリドへの曝露は粗大運動機能の低下と関連しチアメトキサムは微細運動発達の低下と関連していた、としている。
研究グループは、ネオニコ系殺虫剤への出生前曝露と就学前児童の神経認知発達との間に潜在的な関連性があることを示唆しており、公衆衛生戦略を策定するためのさらなる研究が必要としている。
・Toxics, 2026-5-20【関連記事】









